湖城の窓から「駆け引き」

オーストラリアの牛乳の生産量が回復しています。今年3月までの累計生産量は前年を3.1%上回っており、2020/21年度以降3年続いた年間生産量の減少も、今年ようやく反転する見込みです。

供給が増えれば価格が下がることは自明の理。乳業各社が来月1日までに発表する2024/25年度の生産者乳価は、下落するとの予想が大勢を占めています。農業省が来年の乳価は6%下落すると予想しているほか、筆者が取材したビクトリア州の乳業会社も「生産量の増加と生産コストの低減が相まって、価格圧力は緩和する」との見方を示しています。

一方で生産者乳価の下落が収入減を意味する酪農家は、そう簡単に下落予想を受け入れていません。酪農家団体デアリーファーマーズは海外の乳製品価格が上昇していることを挙げ、「需要は強まっており、生産者乳価を引き下げる理由は存在しない」と主張しています。実際に乳製品のオンライン競売システム「グローバル・デアリー・トレード(GDT)」は、昨年7月のシーズン開幕時からこれまでに約14%上昇しています。需要が強ければ価格には上げ圧力がかかります。

20年に施行された行動規範により、生産者乳価は合意後に業況に変化があっても原則的に修正できません。来シーズンの生産者乳価を巡る乳業会社と酪農家の駆け引きは始まっています。(編集長)

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