湖城の窓から 「労組の役割」

オーストラリアの農業界や食品業界の共通の懸念事項と言えば、労働力問題でしょう。食品業界では人手不足は17万人以上と試算され、シフトが組めず営業時間の短縮を余儀なくされる飲食店も出ました。食肉の加工業界では「労働力不足は業界の将来を大幅に制限する状態に達した」と言われ、乳価が良好な酪農業界も、人手が足りず経営者は規模の拡大に躊躇しています。

ニュージーランド(NZ)も同様で、キウイフルーツ業界は生産者の収益が打撃を受け、日本水産が出資する水産シーロードでは、社長自らが工場で作業をせざるを得ない状況です。

両国の政府はこの問題の解決を目指し、移民労働者の受け入れ数の拡大を決めました。この決定に対し、それぞれの業界は歓迎しています。

一方、移民増加に対しNZの労働組合は「不本意」と明言しています。自国労働者の利益代表ですから当然の発言ではありますが、労組は経営者に対し、移民労働者の雇用環境の整備にも注文を付けました。具体例として一部屋に多くの移民を詰め込まないように、としています。これが故にNZの生産地近隣の宿泊施設は奪い合いが発生、必然的にコスト高につながります。

なお、「太平洋諸国の労働者は、同じ部屋に住むことを好む」と主張した経営者がいたそうです。ブラック企業認定とも言える発言ですが、それに対し労組の書記長は「家族以外の他人と同居を好む人々がいるなら、自分をその国に連れて行ってもらいたい」と述べ、即座に却下しています。(編集長)

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