湖城の窓から「気になる動き」

オーストラリアの11月の失業率が、3.9%と18カ月ぶりの高水準になりました。こうした中、農林水産業界の雇用動向はどうでしょう。業界の労働者数は約30万900人で全体の2.2%。平均給与は1週間当たり1,100豪ドル(1豪ドル=約95円)と全体平均の1,250豪ドルよりも低く、過去5年間に従事者が8.2%減少している理由の一つでしょう。

ただ、オーストラリアの人口増加が見込まれることもあり、連邦政府は今後5年間の同業界の労働者数の増加率を5.1%増としています。食料需要が高まる中、労働者を増やしたいという政府の意向も見え隠れします。ただ、農業従事者の受け皿となる土地の確保という点で考えると、少し気になる動きが出て来ました。

オーストラリアは先住民の土地権限を認めており、農業が行われる地方部で彼らの権利が認められています。農業経営者が農地を広げれば先住民権限に抵触することもあり、裁判沙汰にもなります。前政権の保守連合は、地方部を票田とする国民党のおかげか、農業経営者を守る観点から先住民権限に関わる裁判費用を政府が支援しました。一方、先住民諮問委員会「ボイス」の設置を問う国民投票を実行した現労働党政権は、先住民寄りで農業向け補助金の廃止を考えています。こうした動きが今後も拡大するか、注視していく必要があるでしょう。(編集長代理)

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