第29回 パースでムール貝を楽しむ

ムール貝のひげを取るには、根元に向かって引っ張ります

パースではおいしい魚介類が手に入ります。魚屋が入っているショッピングセンターが多く「刺し身で食べられます(Sashimi Grade)」の表示もよく見かけます。店員さんに「クリーニング(Cleaning)」をお願いすれば、魚の内臓やうろこを取ってくれる魚屋もあります。
パースをはじめ、オーストラリアでは魚介類は肉類に比べると高額ですが、たまに豪勢な料理を作りたいと思ったときに、おいしい魚介類が簡単に手に入るのがパースのいいところです。
日本ではどこでも食べられても、オーストラリアではなかなか手に入らない食品はいろいろあります。一方、日本であまり食べる機会がない、オーストラリアのおいしい食べ物の一つがムール貝(Mussel)です。
パースでは、日本でどこでも手に入るアサリのようにムール貝が生で売られています。ムール貝の種類は多いですが、オーストラリアの代表種はブルー・マッセル(Blue Mussel)です。
ブルー・マッセルは西オーストラリア州、南オーストラリア州、ビクトリア州、ニューサウスウェールズ州、タスマニア州で養殖されており、通年購入できます。原産はオーストラリアで、以前は天然貝が市場に出回っていたものの、現在は養殖がほとんどだそうです。
■ムール貝の購入と下ごしらえ
ムール貝を購入する場合は、殻がしっかり閉まっているものを選び、割れているものや開いているものは避けましょう。手で持ってみて、ずっしりと重い方が身が大きいです。
ガラスや陶器の広くて浅い入れ物(オーブン皿など)に水を入れずにムール貝だけを入れ、ラップをして冷蔵庫に入れておけば、鮮度のよいものは翌日までもつそうです。傷むとにおいが発生し、火を通しても開きません。
調理前の下処理では、一つずつよく水洗いし、表面の汚れをブラシなどでこすってよく落とします。それから、ムール貝についている、ひげ(beard)を取ります。ムール貝はこのひげを使ってロープや岩にへばりついています。食べても害はありませんが、取った方が食べやすいです。
■パース名物「チリ・マッセル」を作る
パースのレストランでは「チリ・マッセル(Chilli Mussel)」という料理をよく見かけます。これは唐辛子を効かせたトマトソースでムール貝を煮た一品で、パースでは多くの魚屋でチリ・マッセル用のソースが売られています。
下ごしらえの済んだムール貝を、ふた付きの、大きめのフライパンか広くて浅い鍋に入れ、唐辛子入りのトマトソースで煮込めば、パース名物チリ・マッセルが簡単に作れます。
ソースを手作りする場合には、スーパーなどで入手できる生の赤い唐辛子を使用しますが、乾燥唐辛子を代用することもできます。生の唐辛子に触ると手の皮膚が刺激されるので、できるだけ切り口に触らないように注意しながら、手早くきざみます。
ムール貝に塩味があるので、無塩のトマトペーストで煮込んで、最後に味を確かめながら適宜塩を足します。
ムール貝は味にくせがなく、風味がまろやかです。チリ・マッセルにすると、トマトソースの赤と、最後にたっぷりちりばめたパセリの緑のコントラストで見た目もすてきです。

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投稿者プロフィール

名取 知衣子
1973 年東京生まれ。2013 年から西オーストラリア州・パースに在住。夫、ハイスクールに通う長女、プライマリースクールに通う長男の4人家族。日本と異なる生活に試行錯誤するうちに、オーストラリアの豊かな食事情に興味を持つようになる。オーストラリアのローカル食材を使って日本人が手軽に楽しめる家庭料理を研究中。レシピをブログ「パースで手作りざんまい(http://perth-zanmai.com/)」で公開している。