パースで暮らす 最終回

気が付いたら、この連載を始めて3年以上が経っていました。

連載では、日本で自分がなんとなく思い描いていた「オーストラリア像」と、実際こちらに生活してみて感じた違いを、色んな側面で書いてきました。

素直に衝撃を受けることもたくさんありました。

といっても、悪い意味ではありません。

その一つとして、オーストラリアの産業や生産者に対する見方が変わりました。

正直、日本から見たオーストラリアの産業のイメージって、「きめ細かい品質よりも大量生産を重視」という感じがありませんか?

特に、農産物などは。

私は漠然とそう思っていました。まあ、「オーストラリア産」と言えば、日本で売られているオージービーフや、「国産」と対比した「輸入物」としての小麦、大豆などのイメージがありますよね(いわゆる品質より安さ重視)。

でもこちらに来てみてわかったことは、それはあくまで外から見たイメージ。(日本から見た)輸入国としてのオーストラリアでした。

ローカル人としてパースに住んでみると、こちらでもコストより品質を重視した生産活動を行っている生産者がいることがわかりました。

低コストで大量生産するやり方とは対照的に、安価で質の悪い合成化合物などを安易に使わず、可能な限り人体や自然環境に対するリスクを減らすことを考えている生産者の存在を知りました。

そしてまた、こちらには、そのような生産者を支持し、安さより信頼と愛着を求める消費者も少なくない、と感じました。

そんな消費者に受け入れられた生産者たちの作った作物や、ここ西オーストラリアで手に入りやすい食材、ローカルの食材を利用した、『簡単に作れて家族みんなでおいしく食べられる料理』を紹介、西オーストラリアの食事情についても解説をしてきました。

2015年11月から、45回にわたる連載を通じ、少しはそのようなオーストラリアの事情も伝わったかなと思い、このパースで暮らすを終了とします。

長らくのご愛読ありがとうございました。

【編集部からのお知らせ】

今回をもって「パースで暮らす~食のダイアリー~」は終了です。45カ月にわたりご愛読いただきありがとうございました。次の特集は「オーストラリアで始める農業ビジネス!」です。メルボルン在住の経験豊かな筆者が、オーストラリアで農業を行う場合に必要な視点・技術・知識を紹介します。お楽しみに!

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投稿者プロフィール

名取 知衣子
1973 年東京生まれ。2013 年から西オーストラリア州・パースに在住。夫、ハイスクールに通う長女、プライマリースクールに通う長男の4人家族。日本と異なる生活に試行錯誤するうちに、オーストラリアの豊かな食事情に興味を持つようになる。オーストラリアのローカル食材を使って日本人が手軽に楽しめる家庭料理を研究中。レシピをブログ「パースで手作りざんまい(http://perth-zanmai.com/)」で公開している。