第13回 福島県産品がオーストラリアに上陸?物産展を見て

パース領事公邸で先月、福島県の観光・物産セミナーが行われました。日本からの直行便もないパースで福島県の宣伝をすることになったのはなぜだろうと、興味津々出掛けました。

海外に住む日本人にとってはたまらない日本の味

海外に住む日本人にとってはたまらない日本の味

主催者によると、オーストラリアで大規模展開している日本食材の販売会社ジュンパシフィックのオーナーが、福島県ゆかりの方だそうで、福島県産品をオーストラリアへ広めることを積極的に支援していることや、昨年パースで開かれた展示会への出展が背景にあるそうです。

福島の食材を海外に輸出するにあたって気になるのは放射能汚染に対する基準や検査などですが、オーストラリアは放射能検査について日本の基準を受け入れているそうです。セミナーでは、原発事故の放射性物質についての説明がありました。除染が進んでいることや、国際基準よりも厳しい日本の基準を通ったものしか流通していないこと、そして現在では、商業栽培されたものについては基準値を超えるものはゼロ%ということでした。特に印象に残ったのは、原発事故で深刻な影響を受けた福島県はこの5年間で復興しているにもかかわらず、「間違った情報(風評被害)のために悪いイメージが残っている。そのイメージを払拭し、今の福島の姿を海外の人々に示したい」というメッセージを、何度も力強く繰り返していたことです。

■パースでヘルシーラーメンを!

セミナーでは福島県産の食品や飲料もたくさん振る舞われました。特に人気があったのは大和川酒造店の日本酒で、多くの人が試飲していました。

喜多方グローバル倶楽部が作っている「一番星麺」というラーメンも登場。私自身、喜多方ラーメンを食べに、何度も喜多方まで足を運びました。喜多方産小麦とオーストラリア産小麦をブレンド。スープはしじみのダシに、生産者さん自らが作っている日本酒・醤油が使われているそうです。ノンフライ麺、そしてとんこつを使っていないため、カロリーは通常の半分とか。オーストラリアのナチュラルな素材を使ってヘルシー志向のラーメンを作ったら、きっと注目されるはず!そんなラーメンがパースで食べられたら、夢のようですね。

■「風評被害」と「選ぶ権利」

素晴らしい技術と、良いものを作りたいという情熱。私はそういうものこそ、海外に輸出してほしいし、世界でも認められると思います。福島の素晴らしい人材や技術が海外で認められるよう支援することも、福島への応援になると思います。今回紹介されていた商品の一部は、今後、ジュンパシフィックの系列店で販売されることになるようです。

私はオーストラリアに来て、遺伝子組み換えやMSG、牛肉のホルモン剤など、たとえ国が安全性を宣言していても、消費者が自主的に選ばない商品があることを知りました。そしてここではたとえ大企業であっても、そうした消費者の選択に応える努力をしていることがわかりました。

放射能汚染を「福島」という言葉だけでくくり、名前だけが先行して問題を福島県だけに押し付けてしまうことは間違いだと思います。その一方で、県産品が売れないのは、消費者の無知だけに責任があると考えるのも、また違うのではないかと私は思います。今の時点で安全が確認されても、将来的な影響を考えると、小さい子どもを育てる親の中には懸念を完全に払しょくできない人がいるのも理解できます。

今回のセミナーで、福島県で本当によいものを作ってきた生産者の方々がいることを肌で感じました。日本の素晴らしい食文化、丹精込めて作られた食材、伝統的な技術こそ、日本が世界に誇れる宝物だと、海外に来てみて強く思います。それを育む生産者を国はしっかりと守っていくべきではないでしょうか。

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投稿者プロフィール

名取 知衣子
1973 年東京生まれ。2013 年から西オーストラリア州・パースに在住。夫、ハイスクールに通う長女、プライマリースクールに通う長男の4人家族。日本と異なる生活に試行錯誤するうちに、オーストラリアの豊かな食事情に興味を持つようになる。オーストラリアのローカル食材を使って日本人が手軽に楽しめる家庭料理を研究中。レシピをブログ「パースで手作りざんまい(http://perth-zanmai.com/)」で公開している。