ことの葉 余韻を壊さないで

オーストラリアで、日本食レストランに行きたくなくなった。日本からオーストラリアに帰ってきたばかりだからだ。しかし、日本でたくさん堪能したために日本食に飽きたわけではない。むしろ、日本でおいしい郷土料理を食べたのでその余韻に浸っており、それをナンチャッテ和食で壊したくない、というのが理由。

思えば、外国の地で長年生活して、銀ダラの粕漬けやフキノトウの天ぷらなどを食べたいと常々思っていながら、冷凍サバの塩焼きやパプリカの天ぷらで我が食欲をなだめてきた。だが、本場のふかふかのおいしいお米と郷土料理を食べてしまうと、しばらくナンチャッテ和食でお茶を濁すのはどうも食のプライドを汚すような気がしてしまう。

ただし、外食する際に西洋料理や中華料理ばかりになるのも我慢できない。そうしてまた、具無しの味噌汁だけが先に出てくるナンチャッテ和食店ののれんをくぐってしまうのだろう。(西嵐)

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