こだわり業界人探訪 【第4回】ブドウを使わない「ボタニカル・ワイン」を探究

「ファイアーズクリーク・ワイナリー」のナディア・オコンネルさん

ニューサウスウェールズ州シドニーから車で北に1時間ほどのセントラルコーストに「ファイアーズクリーク・ワイナリー」がある。経営者のナディア・オコンネルさんは、大学の講師からまったく経験がないワインメーカーに転身した変わり種。2児の母親でもある彼女に、ワイン造りの魅力について聞いた。【鈴木雅章】

大学院でマーケティングの博士号を取得。2009年からインドネシアとシンガポールの大学で講師を務め、14年にオーストラリアに帰国した。電気技師である夫の出身地のノースクイーンズランドと自身が生まれ育ったセントラルコーストで家を探した。以前から興味を持っていた有機栽培を実践できる土地を求めていて、現在のワイナリーに巡り合った。

ワインテイスティングするお客さんと談笑するナディアさん ©Chasing Brightness

ワイナリーをひと目見て、その美しさに魅了された。ガーデンゲートを通ると、スイレンが浮かぶ池とあずま屋があり、キウイフルーツ棚の横を小川が流れている。オーナーが有機栽培を手掛けていたのも好都合だった。

■30種以上の果物を育成、25種のワインを少量生産

ワイナリーを引き継ぎ、以前のオーナーからワイン造りの技術やさまざまな植物の有機栽培について学んだ。ブドウを使わないボタニカル・ワインがファイアーズクリーク・ワイナリーの特徴。1ヘクタールの園内で30種以上の果物や40種のバラなどを育てており、収穫した季節ごとの果物や植物を組み合わせ、全部で25種類にも及ぶワインを少量生産している。

年1回のブドウの収穫に依存しないため、季節によって生産できるワインが異なる。使用するのは、ラズベリーやブラックベリー、ブルーベリー、キウイフルーツ、プラム、ライム、イチジク、パッションフルーツ、フェイジョア、ラベンダーなど20種類以上。アルコール度数は10%から14%程度で通常のワインと変わらない。醸造時に卵白などの清澄剤を使用しないため、ビーガンフレンドリーでもある。

■世界に1つだけしかないワインを造

ボタニカル・ワインは通常のワインと製法が異なるため、ほかのワインメーカーからノウハウを学ぶことができない。さまざまな果物や植物をどのような配分で組み合わせるかが、ボタニカル・ワイン造りの最も難しく、楽しいところだ。ユニークな組み合わせによって世界に1つしかない自分だけのワインを創り出すことができるのも魅力。ワインテイスティングでブドウ酒以外のワインを飲んだことがないお客さんの顔がぱっと明るくなるのを見ると最高の気分になるそうだ。

■常に新しいことを

ファイアーズクリーク・ワイナリーは結婚式場としても利用できる ©Chasing Brightness

ワイナリーの経営を本格的に始めて7年目。併設する結婚式場の経営も順調だ。何か新しいことを計画しているか聞いてみると、低アルコールの缶入りスプリッツァーの製品化を考えているという答えが返ってきた。新しいプロジェクトや新製品を考えるのが好きな性分で、それはおそらく、マーケティングを学んだ影響だろうと自己分析している。

ワイナリーを後にする前に、ワインを1本買うことにした。どれにしようかと連れと話していると、「気をつけて。日本語、分かりますよ」とナディアさんが笑った。ハイスクール時代に岐阜県羽島市の高校に留学し、2年間住んでいたそうだ。どうぞ皆さんもご注意を!

 

FiresCreek Winery

住所:192 Wattle Tree Rd, Holgate NSW 2250, Australia

電話:02-4365-0768

電子メール:info@firescreek.com.au

ウェブサイト:http://www.firescreek.com.au/

 

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