第1回(新連載)オーストラリア農業の内訳

食の安全保障が注目される昨今ですが、オーストラリアの食料自給率は高く、200%(カロリーベース・農林水産省調べ)と世界でもトップレベルを誇ります。それを支えるのは豊富な食料を生み出す農業ですが、世界で最も乾燥している大陸と言われるこの国の農業は一体どうなっているのでしょうか。第1回目は農業界の内訳を見てみます。

■オーストラリアでは、どんな農業が盛ん?

オーストラリアの農林水産業には、どんな産業があるのでしょうか。約7兆円規模の業界の内訳は、畜産業が生産高ベースで約36%を占める最大の産業です。次いで穀物が34%のシェアで拮抗し、野菜・果物が約2割です。そして酪農が6%、水産が4%、林業が3%と続きます。

また畜産の中では特に牛肉関連が全体の17%のシェアを占めます。オーストラリアの肉牛生産は放牧によるものが大半で、地域の特性に適した品種の生産が行われています。飼育される牛の数は2,720万頭で、クイーンズランド(QLD)州が約65%と最も多く、ニューサウスウェールズ(NSW)州が約25%、ビクトリア州は5%と東部3州が全体の約95%を占めています。

QLD州は、牛肉の生産量も約半分を占める最大の畜産州となっています。

一方、穀物の中では小麦産業が最大で、全体生産高の14%です。小麦に代表される冬作物の今年度の生産量は6,190万トンで、そのうち西オーストラリア州が最大シェアの2,310万トンを生産します。NSW州が2位の1,880万トンですが、気候条件によってはNSW州が生産量第1位の年もあり、両州はライバルといえるでしょう。

■オーストラリア農業の成長の源は?

オーストラリアでは多様な農林水産業が営まれ、さまざまな作物や畜産物が生産されています。農林水産業の総生産高は、過去20年間で7%増加(実測値ベース、インフレ調整後)し、2001/02年度の約700億豪ドル(1豪ドル=約93円)から20/21年度の750億豪ドルに成長しました。

この20年間の成長の原動力は、大きく見て2つあります。

1)穀物:長期的に見ると下落している価格が、生産量の増加で相殺されています。農家が新たなテクノロジーを導入したり、生産プロセスを改良したりして、継続的に生産性を向上させたのです。

2)畜産:価格の上昇が業界の成長を後押ししています。新興国のタンパク質需要の高まりが価格上昇の背景ですが、一時的な要因も数多くあります。例えば米国の干ばつや、アジアに広がったアフリカ豚熱といった家畜の病気などが、逆にオーストラリアの食肉需要を強く支えました。

連邦政府や全国農業者連盟(NFF)は、30年の農業生産高を1,000億豪ドルにするという目標を立てています。【ウェルス編集部長・湖城修一】

 

新連載「今さら聞けない オセアニア農業のキホン」は、オーストラリアやニュージーランドの農業の基礎的情報を取り上げ、毎月第3週に掲載します。お楽しみに。

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