疑心暗鬼

道頓堀の路地を入ると、そこは法善寺横丁。石畳を踏みながら、昭和の香りを残す通りを歩けば、日々の喧騒も忘れてしまう─。ハッ、なぜに自分はこのような旅コラムを書き始めているのか。そうだ、台風19号の影響でシドニーに戻る便が欠航になったからだった。

思いがけない休日。大阪名物の串カツの店に入ってみた。店内は店長らしき人だけだったが、カウンターに座り、串カツ5本盛りとビールを頼んでしばらくすると、奥から若い店員が出てきた。どうやら用を足していたらしい。手は乾いている。若い店員は厨房に入ると、串カツを揚げ始めた。手を洗ったか、洗っていないか、判断に迷う。店員はしゃがみ込み、二日酔いだと店長に訴えている。ここで後者に傾いた。

串カツが出てきた。お代わり自由のキャベツが添えられていないことに気づいたが、疑念が邪魔をし、頼めなかった。早々に店を出て、台風一過の空を見上げた後、隣の串カツ屋に入った。(城一)

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