オセアニア農業の歩み「オーガニック農法の課題」

今週のトップニュースでは、日本とオーストラリア・ニュージーランド(NZ)が有機酒類の相互認証に合意したことを取り上げました。これまで、輸出先ごとに再認証を取得しなければ有機と表示できなかった制度上の壁が取り払われ、特に輸出拡大を目指す中小の事業者にとっては大きな追い風となります。

ただし、オーガニック農法は慣行栽培に比べて収穫量が少ない傾向があり、近年の異常気象の影響も重なって、生産の安定性には依然として課題が残ります。一方で、有機栽培のブドウ畑では、周囲の畑で病気が流行していても、ブドウの木が自然に病気と闘えるような生態系が整っており、病気に強く育つ例も見られます。こうした現場の知見から、有機にこだわらず、安定供給と持続可能性の両立を目指す動きも広がっています。

筆者がかつて訪れたオーストラリアのワイン産地・ハンターバレーの農園では、10年以上前から強靭な生態系の構築を目指し、土壌改良や堆肥の自家製造に取り組んでいました。化学肥料に頼らない土づくりを地道に続けており、そこには自然との調和を重んじる生産者の姿勢がありました。

近年オーガニックの分野で需要が高まっているのが、NZの乳製品です。米国市場などで高い評価を受けており、2024/25年度(6月期)のオーガニック生乳に対する生産者乳価は過去最高を記録しました。この動きを商機と捉え、NZではオーガニック酪農に新たに挑戦する生産者も増えています。

オーガニック市場の拡大には、当然のことながら、制度面の変更だけではなく、消費者側が価値に見合ったプレミアムな価格を受け入れる姿勢も求められています。(本田歩)

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ウェルス編集部

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