湖城の窓から「見せ球」

オーストラリアと英国が、自由貿易協定(FTA)に調印したのは2021年12月で、翌年の7月に発効予定とされていました。しかし22年中には実現せず、両国首相は年末のG20において今年第1四半期の発効で合意していました。それでも連邦政府は安心できなかったのか、ワット農相が1月に英国を訪問しています。

英国では、一部の農業団体や議員が、「安価な豪産農産物が市場を席巻する」という危機感を持っているといわれます。農相はその懸念を払拭しに訪問した訳ですが、では英国で何を話してきたのでしょうか。

伝えたのは「ハイバリュー市場の英国に、豪産農産物が殺到することはない」ということです。「オーストラリアは今後もアジアのハイボリューム市場に焦点を当てる」とし、英国には高級食肉や高級水産物が輸出され、英国にとってオーストラリアは主流ではなく補完的な輸出国になると説明したそうです。

この図式、日本との関係に似ています。例えば豪産牛肉の輸出先第1位は、アジアのハイバリュー市場の日本ですが、タマネギ、ニンジンなどのコモディティーでは日本はトップ市場ではありません。オーストラリアの輸出業者は少量の日本輸出を見せ球に「日本でも認められた品質」とアピールし、アジア市場で大量に売りさばいている状況です。

農相の言葉が正しければ、今後、英国への輸出はアピールとして用いられ、本当の狙いはFTA交渉で次に控える欧州市場なのかもしれません。(編集長)

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ウェルス編集部