新・豪州Wagyuと歩む 第12回 豪州産和牛の価値と評価

Vic’s Meatという食肉会社が1キログラム当たり450豪ドル(1豪ドル=約93円)の和牛肉を限定販売することが話題になっていました。オーストラリアの和牛も松坂牛や神戸牛並みの高付加価値が付いたのかと感心しました。しかし、実際に流通しているオーストラリア産和牛の品質と、市場価格の差に驚くこともしばしばあります。和牛肉の品質基準の違いが、このような現象を生み出しているのでしょうか。

■肉質評価(格付け)とは

日本の牛肉はほぼ100%市場を通して流通されます。その過程で、日本食肉格付協会の格付員によって歩留評価(A、B、C段階)と、サシ(脂肪交雑)、肉色、脂肪色、キメ/シマリといった肉質の総合評価(1~5段階)で格付けされ、競りにかけられて値段が決まります。

和牛の最高品質はA5です。肉質評価のどれか一つでも劣っていると、5等級はつきません。近頃では、飲食店が「A5 サーロイン」などと表示することが多くなりました。これは、消費者に対する品質保証にもなっていると思います。また、日本の牛肉流通システムの中では和牛というのは「黒毛和種」の牛肉というのが一般的で、交雑種や褐毛和種、日本短角種の牛肉はそれぞれの名前で販売されています。

オーストラリアにも、AUS-MEAT CHILLER ASSESSMENT というシステムがあり、主に輸出向けの牛肉に対して、穀物肥育(Grain-Fed)、牧草肥育(Grass-Fed)、サシ(BMS1~9)、肉色、脂肪色、などの評価があります。一般的に、オーストラリア産和牛肉の評価はサシの度合いを主に評価されることが多く、それ以外の評価があまり重要視されていないのが現状です。また、交雑種や褐毛和種の牛肉も同じ和牛として販売されています。例えば、F1(交雑種)でも100%和牛(穀物肥育、牧草肥育を問わず)の牛肉でも、BMS9であれば高評価というわけです。レストランなどでも「BMS9 WAGYU」などといった宣伝が多く見られます。

■今後の豪州産和牛の評価

交渉の続く環太平洋連携協定(TPP)が本格化してくれば、オーストラリア産の和牛肉が日本へ輸出されるということだけでなく、日本産の和牛肉がオーストラリアに入ってくることも考えられます。日本産とオーストラリア産の和牛肉を比べると、その肉質の違いに驚くと思います。

オーストラリアで和牛を生産している自分にとって、日本産和牛のような牛肉を作ることは大きな目標になっています。サシだけではなく、脂質、ロース芯の大きさ、肉色、シマリなど、日本の規格の中でも高く評価されるような和牛肉を作ることが、将来同じ土俵に立った時に価値あるものになるでしょう。オーストラリア産和牛の発展のためにも、牛肉評価を見直し、改良を進めて良い牛肉を作り続けていくことが大切だと感じます。

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投稿者プロフィール

鈴木 崇雄
シドニー近郊のブルーマウンテンにある和牛牧場「 ベルツリー・オーストラリア」代表。日本人が営む唯一の和牛牧場として、オーストラリアで注目を集めている。