湖城の窓から「痛み分け」
オーストラリアの酪農家の収入は、加工会社への生乳の納入代金である生産者乳価に左右されることは言うまでもありません。最大の酪農地域ビクトリア(VIC)州では現在、乾燥気候の長期化にもかかわらず、7月に決定されたこの乳価が引き上げられていないことで酪農家の不満が溜まっています。
生産者団体VIC州酪農家協会(DFV)は7月に、乳価の損益分岐点は7.8-8.2豪ドル(1豪ドル=約100円、乳固形分1キログラム当たり)との推計を発表しました。ほとんどの加工会社はこれをわずかに上回る乳価を提示したとみられています。
しかしその後、VIC州は南西部を中心に、一見では植物が生えているようにみえる「緑の干ばつ」が続いています。DFVのビリング代表は、飼料費などコスト増を賄うために乳価の上昇が必要とし、「引き上げは酪農家だけでなく加工業界にとっても利益だ」と主張しました。
同代表の主張する加工業界の利益とは、「乳価を引き上げれば酪農家は離農せず、加工会社も存続できる」ということ。裏返すと「現行水準を維持するなら、酪農家がいなくなる」と脅している状況です。
さて、加工業界はこの脅しに反応するでしょうか。加工業界は乳価が最高水準だった過去2年あまり、工場の閉鎖など合理化を続けました。大手のサプートなどは、国内の工場数を半減しています。身を切るリストラの中、生活コスト高に苦しむ消費者からは、販売価格の引き下げ圧力も増えています。こうしたことから、乳価の引き上げは、少なくとも酪農家の減少ペース上昇が顕在化するまでは実現しないように思われます。
双方にとって厳しい状況が続いています。(編集長)
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