湖城の窓から「ガラパゴス」

日本産の和牛は、オーストラリア産ワギュウよりも高品質――。オーストラリアに初めてワギュウを持ち込んだ豪業界の第一人者、デービッド・ブラックモア氏の言葉です。しかし氏は、先月掲載した弊誌のインタビューでこう続けました。「日本の和牛が現在提供しているものは、西洋の消費者が受け入れるものではないかもしれない」と。

今回日本の和牛業界がシドニーで開催したセミナーでは、和牛の高い品質がアピールされました。豊富なサシ(霜降り)や独特の香りをもち口の中でとろける脂。和牛はこうした点で世界の一級品であることに疑いはありません。ただ、現在それを好むのはニッチ市場であり、気が付けばマス市場は日本が二級品と下に見ていたオーストラリアのワギュウが席巻していたという構図が見えています。

ブラックモア氏は「顧客の声に耳を傾け、求めるものを提供するのは本当に重要なこと」と言います。日本の和牛は外界から隔絶された中で独自の発展を遂げ、世界の流れからかけ離れつつあるかもしれません。いわゆるガラパゴス化です。あるいは今後、業界の尽力で日本の訴求に世界の消費者が耳を傾けるのか。

日本産和牛は今が正念場。ただし現時点では、自らの価値観を消費者に強いている感がしなくもありません。(編集長)

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