第69回 シドニーと山陰地方を結びたい!sasakiのシェフ、優さん

優さんとsasaki の看板
抹茶ラテなどが人気のシドニーの隠れ家的なカフェ「Cre Asion(クリエイション)」を6年前に始め、今年4月1日に日本食レストラン「sasaki」をオープンしたシェフの佐々木優さん。「ほかの人に還元したい」、「海外にいても日本の地元に貢献したい」という強い気持ちがsasakiの開店につながったという優さんに話を聞いた。
島根県出身の優さん。26歳のときに立ち上げたカフェの経営をしながら、30歳を迎えたことを機に、ビジネスの次のビジョンを考え始めた。事業を通して達成したいことは何かと考え、頭に浮かんだのが「他者への還元」。レストランでのシェフの経験があり、出身地である島根県を発信するレストランを開きたいと考えた。
優さんによると、島根県は非常に良いものを作っていながら、その発信がしっかりできていない。「良いプロダクトがありながら、特に海外向けにマーケティングが十分でない」と語る。そのため、sasakiの内装や器には島根県など山陰地方の職人が作った逸品を使う。「自分が見て、いいなというものを選ぶ」そうで、店を訪れた客の目や手に触れるものにこだわった。提供する料理も故郷の影響を受けている。とはいえ、島根県の料理をそのまま出すのではない。目指すのは味の組み合わせなど「食べることで島根を感じてもらう料理」だ。「スタイルに沿って(料理を)作ることは簡単。自分が良いと思う部分は変えずに、日々より良い料理を提供できるようにしたい」と優さんは語る。
■アプローチは「洋」
島根県を発信するが、食材はオーストラリア産を使う。「日本で食べる日本料理をオーストラリアの食材で作った場合、日本で作ったもののほうがおいしくなる。日本の日本料理を再現するのではなく、その国の食材に合った作り方があるはず」(優さん)と考える。優さんによると、和のアプローチは素材をどう生かすかで、洋のアプローチはどう組み合わせるかにある。sasakiは和を出す店だが、アプローチは洋だそう。
優さんは高校卒業後、ニュージーランドに語学留学。日本への帰りに寄ったシドニーでその「自由さ」にひかれた。「外国人なのに生活しやすく、ルールに縛られることなく自由な表現ができる」という。26歳の若さでカフェを立ち上げたが、日本だったら早すぎると反対され実現できなかっただろうと振り返る。
シドニーのフードシーンについては、新しいことへの関心が強いのが良いところとしながらも、「これを食べるならここ」という店の使い分けがまだできておらず、日本で見かける何十年もこだわって特定の料理を作るような専門的な店作りが難しいそうだ。

器にもこだわる
■短編映画を制作
島根県を発信したいという優さんの思いは、親日家であるsasakiの物件オーナーと、その友人である写真家の協力で、島根の職人を紹介する短編ドキュメンタリー映画の制作につながった。イメージしたのは、85歳のすし職人を追った米国の作品「Jiro Dreams of Sushi」だ。「分かりやすい部分だけを伝えるのではなく、深いところまで掘り下げた、思いのこもった作品になった」と自負する。現在は編集作業中で、6月末までの完成を目指す。ジャパンファウンデーションでの上映も計画する。
優さんはこれまでの経験を通じ、「人があってこそのビジネス」との思いを強めた。今後も「他者への還元」に取り組み、特にメンターとして、若い人の育成に力を入れたいと考えている。さらにsasakiを通じて島根とシドニーを結び、人の行き来を生み出したいと思っている。店を訪れ、その後島根県を訪れる人も出てきた。
優さんは、「ビジネスとしては難しいかもしれない」ものの、島根の森の中に設けた店にシドニーから人が訪れるような、双方向の人の流れを作れたらとも考える。日々精進を重ねながら、食を通じ、シドニーと島根県の両方に「還元」を続けていく。
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