第68回 日本の食材を世界へ!SDマーケティング・グローバルの由理さん

豪テレビ局からも取材を受けた由理さん(左)

和食の正しい知識を海外で伝えることが、結果的に日本の食材に対する興味や需要を高める─―。大けががきっかけで「食」の世界に興味を持ち、シドニーで和食に関する情報をオージーなどに広く提供する「Washoku Lovers」を立ち上げた、SDマーケティング・グローバルのマネジングディレクター、尋木由理(たずのき・ゆり)さんに話を聞いた。

大学卒業後にはPRスペシャリストとして大手自動車メーカーで働いていた由理さん。けがで1カ月の入院を余儀なくされたことが、体作りと食事の関係を見直すきっかけとなった。入院中の空き時間を利用して、健康的な食事について情報を提供する掲示板をネットで立ち上げたが、読者の質問に十分に答えられない自分の知識不足にショックを受けたそうだ。

その後、2年間フルタイムの栄養士の学校に通い始める。周囲は驚いたが、由理さんは学校に通いながら、料理講師をし、食事法であるマクロビオティックから日本の食料自給率の問題についてまで、幅広く食の勉強を続けた。特に食料自給率については、日本産の食材が価格を理由に海外勢に押されていることに強い衝撃を受けた。その時に抱いた、日本の食材をもっと海外の人に知ってほしいという思いは今もブレていない。

■優れた料理人との出会い

大阪出身の由理さんがシドニーに住むことになったきっかけは、リクルート社勤務時代の短期ホームステイ。食に関心のある家族を希望し、リピーターとして同じ家族に複数回滞在した。気候の良さや人のおおらかさ、食材のおいしさ、オーガニック農業などが魅力だったという。その後シドニーでの仕事を通じて飲食店オーナーとのつながりができ、オーストラリア人向けのPR事業を充実させる必要があるとして、独立して手がけることにした。

由理さんは日本で栄養士の学校を卒業後、糖尿病患者向けのレストランへの就職が決まっていたが、たまたま新幹線での移動中に読んだ本に載っていたリクルート社に興味を持ち、自分を成長させてくれる会社だと即応募。飲食部門で、経験のない営業を地元大阪で基礎から学ぶことを希望した。高級店の多い北新地で新事業に携わり多くの料理人と出会ったことも財産だ。ビジネスとしての和食、職人の目から見た和食それぞれに対応することを学んだ。

■日本の「さしすせそ」を世界へ

シドニーでテレビやラジオ、紙面などへの広告のチャンネルを確立した後、力のあるメディアとして由理さんは消費者目線で信頼を集めやすいブログや交流サイト(SNS)に着目する。シドニーとメルボルンのフードブロガー約550人に接触し、新PRサービスを始めた。ラーメンの一風堂との契約を契機にSDマーケティング・グローバルが立ち上がったのが、14年6月。15年3月には和食を食べたいというオージーや外国人向けに和食文化やレシピ、店舗情報を発信するサイトWashoku Loversを立ち上げ、その会員数は現在1万6,000人になった。さらに、和食の作り方を学びたいという会員の要望を受けて、一般向けのWashoku Lovers Kitchenを開催。和食が好きという会員が日本への興味を深めることで、訪日を促し、ゆくゆくは日本産食材の支援につながることを期待する。今年3月からは、日本の食材を使ってみたいという地元シェフなどからの要望を受け、40時間のトレーニングプログラム「Washoku Culinary School」を開始した。食材の良さを伝えるのはシェフの力が大きいとの考えが背景にあり、オーストラリアで初めてとなる、和食の基本的な教育を行うプログラムだ。

SDマーケティング・グローバルのSはSNS。SNSとデジタル(D)を通してグローバルに情報を広げるとの意味がある。由理さんが将来目指すのは、世界の食卓に日本の調味料「さしすせそ」を持ち込むこと。作るものが和食でなくても、隠し味に黒酢を入れる、スープにワカメを入れるなど、日本の調味料や食材を取り入れるようになることだ。情報技術(IT)の発達で、日本の生産者と世界の消費者を結べるようになるとも考える。

和食のイベントやトレーニングを提供しながらWashoku Loversの会員を5万人に増やしたい考えで、オーストラリア以外の英語圏も見据える。新たな飲食店予約サービスなども模索しながら、業界全体が恩恵を受ける形での和食の普及、ひいては日本産の食材の振興に努めていくつもりだ。

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