第55回 酪農だけじゃない!VIC州農業をのぞき見
今年4月に在日オーストラリア大使館で行われたオーストラリア産食材を使ったメニューコンテスト「テイスト・オブ・オーストラリア」で各賞を受賞したシェフやソムリエが参加する、ビクトリア(VIC)州の農業視察ツアーに一部同行した。VIC州はオーストラリア全国の牛乳生産の3分の2を担う酪農産地として知られるが、今回目にしたのは、アスパラガス生産やワイナリーなど、酪農以外の多彩な農業だ。

まず訪れたのは、クーイーラップ(Koo Wee Rup)でアスパラガス生産を行うモマック(Momack)社。600ヘクタールの畑を持ち、生産から梱包(こんぽう)、輸出までを一手に手掛ける垂直統合型ビジネスモデルとしては、国内で業界最大手という。国内のスーパーマーケット大手のほか、日本をはじめ、香港、マレーシア、中国などのアジア各国や中東にも輸出する。国内向けの割合は、ウールワースが75%、コールズが25%だ。
収穫は人の手で行い、春以降のシーズン中は日中の暑さを避けて午前3時~午前8時に行われる。朝に収穫されたアスパラは午後には梱包されて毎日出荷され、収穫から24~36時間後には日本の消費者の手元に届く早さだ。シーズン中は、畑に隣接する梱包所3カ所を含む、梱包所全12カ所で従業員120人が働く。
収穫されたアスパラは大きさがまちまちだが、センサーを使って機械でサイズ別にまとめて分別する。そのため、畑ごとにアスパラのサイズをそろえる必要がなく、さまざまな大きさのアスパラガスを一緒に栽培する。納入先ごとに好みのサイズがあり、国内向けの規格は5種類だが、輸出用は30種類にも上るそうだ。
梱包に使う容器は、輸出用は水分を適度に保つよう木箱に入れるが、国内向けは輸送費を削減するなどスーパー側の要望で軽いプラスチック製。日本では国産の生産が減る冬場に輸入が増え、9~12月はその7割がオーストラリア産だという。季節が逆なことも奏功している。モマックによると、アスパラが「競合するペルー産よりしっかりしている」のが強みだ。
■土壌に豊富な水分
このクーイーラップという地域、肉牛やジャガイモ生産も行われているが、アスパラガスの国内最大産地だ。5キロメートル先が海、周辺に川もあることで、土壌の水分が豊富なことがアスパラ栽培に向いているという。モマックの農場も水をまく必要がないため、かんがいを使わない。自然の環境下で栽培することで、アスパラの味の強さが増すという。同社のアスパラ畑では、生産を行わない冬場は雑草対策で除草剤をまくが、いったんアスパラの芽が出てくれば除草剤の散布は行わない。
モマックはさらに、日本のスーパーで構成するCGCを通じて、日本に芽キャベツも輸出している。

木の健康管理、剪定の説明を受ける
■海外ではユーカリ風味が人気?
別に訪れた、日本にも輸出するブティック・ワイナリーのレスブリッジ・ワインズでは、ほぼ手作業で、オーガニック(有機)と化学薬品を使わないバイオダイナミック農法を行っている。重視するのはワイン用ブドウの木の「からだ作り」だとか。それぞれの木が最大の成果を上げられるよう、剪定(せんてい)の仕方にも気を配る。
参加者から驚きの声が上がったのは、自然に生えるユーカリの木への対応。ユーカリが畑にあると作るワインにメントール系の香りがつくが、国内向けでは敬遠され、ユーカリを切ってしまうことが多い一方、海外からはその香りが「オーストラリアらしくユニーク」だとして重宝されるそうだ。
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