第23回 豪農業はより少ない資源で増産を!シドニーで「F20」開催

先月ブリスベンで開催された20カ国・地域(G20)首脳会談に先立ちシドニーで開かれた、オランダの農業金融機関ラボバンクによる食料安全保障サミット「F20」に出席した。世界では人口の増加に伴って今後40年間に食料生産を倍増させる必要があるとされる一方、生産や供給網、インフラが十分でないことから、現在は年間250万人の子どもが栄養不足で命を落としている。今度どのようにして持続可能な方法で、増え続ける人口を養っていけばいいのか。その方法が主要議題として話し合われた。

ラボバンク幹部のベリー・マーティン氏は講演で、2050年までの農産物生産倍増を達成する方法を考え付かなければ、世界は食料危機に直面することになると予想。その中で、アジアの中間層が今後増加することを背景に、アジアに近く人口1人当たりの利用可能な農地が世界で最も広いオーストラリアは今後、アジアからの高品質食品への需要の高まりを追い風に、十分な利益を得ることができる理想的な位置づけにあるとして、オーストラリアが果たす役割への期待感を示した。また、続いて講演したオランダ経済省の高官は、オーストラリアの農業は水の有効活用など、「より少ない資源を使っての増産(produce more with less)」が重要になるとし、官民提携(PPP)などを活用して、都市と農村をつないでいくことが長期的に大切だと訴えた。

■競合メガファームに対抗

一方、最も注目を集めた講演者、畜産大手オーストラリアン・アグリカルチュラル・カンパニー(AACo)会長のドナルド・マクガキー(McGauchie)氏も、「(オーストラリアは)かつて見たことのない大きなチャンスを目の前にしている」とし、オーストラリア農業の成長可能性に言及。しかしその一方で、連邦政府がインフラの老朽化や研究開発(R&D)投資の減少などに確固たる姿勢で取り組まなかった場合、その成長機会は奪われると警告した。

同氏は、オーストラリアの農家がブラジルやニュージーランドなどの競合国の「メガファーム」と比べると規模が小さいことに触れ、競争力を高めるには◆市場アクセス改善◆コスト削減◆生産性向上の3つの課題に取り組む必要があると指摘。アジアとの自由貿易協定(FTA)による勢いを失わないためにはアジアにアクセスするためのインフラ整備が不可欠であり、外資を積極的に呼び込むべきだとした。また、コスト削減に向けた規制緩和例として、沿岸海運など国内海運の輸送コストを引き下げるべきだと続けた。マクガキー氏は自身も農家であるほか、全国農業者連盟(NFF)の元トップであり、農業ビジネス企業の会長、テルストラの元会長、オーストラリア連邦準備銀(RBA)元理事の経歴がある。

■「干ばつ支援は国益にかなわず」

農業分野で強い発言力を持つマクガキー氏だが、農家向け干ばつ支援を「国益にかなうとは言えない」とばっさり切り捨てたことに対して、農家が半分以上を占める観客が身を固くする一幕もあった。同氏は、農業改革には時間がなく「痛みを伴う変化」が必要との見方から、研究開発(R&D)予算が削られる中で、干ばつ支援の半分をR&D部門に投じるべきだと主張した。

また、NFFのフィンレー代表も講演し、農産物の生産分に占める輸出の割合を現在の6割から9割に高め、「アジアのデリ(惣菜店)」を目指したいと発言。農業が直面する問題は世界共通であることから、今後は国を超えた団結が一段と必要になると述べ、2016年の世界農業者機構(WFO)の総会がオーストラリアで開催されることを明らかにした。

F20には約660人が出席。次回のF20は来年、G20が開催されるトルコで開かれる予定だ。

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