第8回 世界の羊乳利用、開始は紀元前

日本ではなじみの薄い羊乳ですが、意外なことに、羊乳は牛乳よりも早い時期から利用されてきたことをご存じですか?特に羊乳チーズの歴史は古く、イタリアのペコリーノ・ロマーノやギリシャのフェタなど、紀元前から作られていた歴史あるチーズは、ほとんどが羊乳製です。これらのミルクで作ったチーズは、牛乳では出せない、コクやうまみを持つと言われています。

また羊乳は、栄養価の面で優れており、ビタミン、ミネラルなどを豊富に含むことから、アトピー性皮膚炎などアレルギーを持つ人にも勧める意見もあります。中央畜産会による各家畜の乳成分比較データによると、羊乳の脂肪は牛乳の約1.7倍、タンパク質は、牛乳の約1.8倍もあります。

世界的に見ても羊乳は古くから貴重なタンパク源として利用されており、羊乳生産用として飼育されている品種では、中近東に多く見られるアワシやキオス、欧州ではオストフリーシアン、フライスランド、ラコーヌなどが有名です。

国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の羊乳生産量は約821万トンで羊肉の生産量を上回ることから、羊乳生産が各地で重要な産業として位置付けられていることが分かります。羊乳の生産量が最も多い国は中国で107 万トン。以下◆トルコ:83万トン◆イタリア:76万トン◆ギリシア:67 万トン◆シリア:52万トン◆イラン:46万トン◆スーダン:46万トンと続きます。

一方日本では、家畜を飼う土地が狭いなどの理由から、田畑を耕す労働力として数頭飼うにとどまり、羊乳の利用は限定されてきました。明治
時代には乳用種のオストフリーシアンが輸入されましたが、その当時に羊乳が利用された記録はありません。

しかし1990年代後半からは、羊乳の加工に関心を持ち、乳用種のフライスランドを導入して、飲用乳や羊乳アイスクリームの製造・販売に取り組んでいる農場も見られるようになりました。

牛乳とはひと味違う羊乳製品の味を、ぜひ試されてみてはいかがでしょうか。

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