第6回 羊はいつ日本に来た?
現在ではすっかり日本人の生活の一部となっているウール製品ですが、ウールが日本にいつごろ入ってきたかをご存じでしょうか?
日本はかつて、羊とは無縁の国でした。初めて羊について記述したのは日本書紀で、その中には「599年に百済より羊2頭を献ず」という記載があります。その後、820年、935年、1077年にそれぞれ新羅、大唐、宋から羊が贈られたようですが、当時は日本にいない珍獣という程度にしか認識されていなかったようです。正倉院にはペルシャなどからもたらされた織物が保管されていますが、いずれにしても日本で羊毛が注目されるようになったのは16世紀以降のことです。
羊毛が日本に入ってきたきっかけとしては、1543年にポルトガル船が種子島に漂着し、それまで日本になかった鉄砲が伝来したことがあります。それ以後、ポルトガルをはじめとするヨーロッパ人が日本を訪れるようになり、彼らの持ち込んだもののひとつに、当時の日本人にはなじみの薄かった毛織物や敷物がありました。
ただし持ち込まれたウール製品の数量は限られていたため、日本でウール製品を購入できたのは将軍・大名たちに限られたといいます。しかしウール製品へのあこがれは時代と共に高まり、江戸時代には富裕な商人たちもウールの羽織や敷物を買うようになりました。こうして18世紀になって服地や敷物の輸入が急増したため、江戸幕府は羊毛製品の国産化を検討するようになりました。毛織物の国産第1号「国倫織」の試織りに成功したのは蘭学者、作家、また発明家として知られる平賀源内です。
その後も国産化を目指した試行錯誤は続きますが、牧羊本格化への動きは、軍服などの毛織物需要が高まった明治維新以後に加速したようです。ウール製品はわたしたちにとって大変身近な存在ですが、国産化の起源が江戸時代にまでさかのぼるとは驚きです。
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