肉を切らせて骨絶たれる

今夜はステーキでも焼くかと商店街に出掛けた。普段は某スーパーで買い物するのだが、近くの精肉店が開いているのに気付いた。「地元の店を応援しなければ」と初めて足を踏み入れた。

店内には先客がいた。ベンチに2人腰掛け、大柄な男性がショーケースの前に立って肉を物色している。店の奥から小柄な初老男性が両手をこすり合わせながら出てきた。「さて次はどちら?」と客の顔を眺め回す。2秒経過。誰も何も言わないので、「えーと、そこのランプ肉を」と言い掛けると、「こちらが先のようなので」と店主。立っていた男性が苦笑しながらチラッと振り返った。これはあれである。順番を守ることを知らない非常識な客になってしまったわけである。

男性は店主と「マイト会話」を交わしながら、ひき肉だのラム肉だのを注文している。当方はその間、見たくもない牛肉の部位表を凝視して時の流れを待った。「この店にはもう来ないかもしれないな」と思いながら。(短吉)

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