湖城の窓から「のど元過ぎれば」

昨年9月、オーストラリアの羊とヤギに電子識別タグ(EID)の装着を義務付けることが決定しました。EIDの導入で、病気が蔓延した際に家畜の移動経路を確認でき、病気に感染した家畜との接触の可能性を調べることができる、優れた仕組みです。

さて新しいシステムを導入する時に問題になるのはコスト。羊・ヤギ業界も例外ではありません。導入に先立ち連邦政府が委託した調査によると、全国の導入コストは約4億豪ドルでした。それに対し連邦政府の支援金額は、3年間でわずか4,670万豪ドル。ニューサウスウェールズ(NSW)州の農業者連盟は、EIDの導入コストは1農場当たり7万豪ドルで、さらに農場の改修費用がそれ以上にかかると主張し、「支援はとてもじゃないが足りない」と不満を表明しました。

しかし連邦政府は「かなりの支援」と反論。EIDは業界、州、連邦の共同責任としています。NSW州がこれまでに拠出した額はわずか350万豪ドル。今後は連邦と協議するとしていますが、シブチンの姿勢を崩さない連邦ですから、多くは期待できないかもしれません。ちなみに国内の羊の頭数は7,600万頭。牛の3倍近くです。

そもそも口蹄疫がインドネシアで蔓延した時、バイオセキュリティーのリスクが高まったことで、あっという間に義務化が決まったEID。のど元過ぎた今、コストを理由に導入反対の声が上がる可能性がありそうです。(編集長)

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