湖城の窓から「かき消された声」

大麦、ワイン、食肉、ロブスター、材木、綿花…。公式、非公式を問わず、中国がオーストラリアからの輸入を制限した農産物で、その合計被害額は200億豪ドルに上るとも言われます。しかし最近の豪中の緊張緩和の流れを受け、業界では中国市場への再アクセスに大きな期待が湧いています。

一方で、関係回復を心待ちにしていたのはオーストラリアだけではないようです。メルボルンの事業用不動産業者LAWDによると、オーストラリアの地方の不動産に対する中国企業からの問い合わせが急増。実際にこのほど、ニューサウスウェールズ州で綿花を生産する国内最大級の灌漑農地が、中国の衣料品製造スマート・シャツに1億2,000万豪ドルで売却されました。

こうした双方向の経済活動の再開は、概ね歓迎されているように見られます。LAWDは「中国の不動産買収はこれまでと異なり、洗練された戦略的なビジネス上の理由による」とコメントしています。しかし中国側の姿勢に、何らかの変化があったのでしょうか。「中国の台湾に対する野望が残る限り状況は変わらない」としたワイン醸造の老舗タービルクや、「外相交渉で進展があっても世界貿易機関(WTO)への訴訟を取り下げるべきではない」とした西オーストラリア州の大麦業界の発言は、巨大市場への期待の大きさに、かき消されたように感じます。(編集長)

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