湖城の窓から「利益重視に」

オーストラリアの今年度の農産物予想輸出額は、649億豪ドル(1豪ドル=約92円)で過去最高額に達するとの見込みです(農業資源経済・科学局)。生産高も800億豪ドルで、2年前の600億豪ドル台から約30%も増えると予想されています。言うまでもなく高いコモディティー価格が寄与する訳ですが、そんな状況でオーストラリアの農家はさぞや左ウチワかと思いきや、現実は異なります。

全国農業者連盟(NFF)のシムソン代表は「ポシティブな生産予想は『農業のコスト危機』を隠蔽する」と述べ、「こうした数字は、農業界の全体像を描いていない」と注意を促しています。売上高は高額でも、経費も高く、利益は薄いという主張です。

問題となっている投入コストの代表格、肥料の価格は現在、2008年に投機マネーが原油高騰を招き、肥料に影響した時以来の最高水準に達しています。市場分析会社トーマス・エルダーズ・マーケッツ(TEM)は、公開されている肥料価格データはないと前置きした上で、今月の肥料(尿素)価格は940-970豪ドル(1トン当たり)の範囲としました。19年は400豪ドル台でしたから、実に2倍以上です。

NFFは現在、農業のコスト高騰が消費者に影響を及ぼさないよう政府に協力を求めています。9年ぶりに政権を奪回したばかりの与党労働党は、期待に応えたいところでしょう。

まずは前政権とNFFが定めた、30年までに農業生産高1,000億豪ドル、という目標を白紙撤回するかも、と思っています。(編集長)

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