オセアニア農業の歩み「犯罪の波」

今週の紙面では、オーストラリア・ビクトリア(VIC)州で深刻化する小売店を襲う犯罪と業界の対策について取り上げました。大手小売りのコールズは、過去2年間で犯罪の取り締まりに向けた対策に1億豪ドル(1豪ドル=約96円)を投入したとみられていますが、現場の緊張感は高まり続けています。

最近では、乳児用粉ミルクや化粧品、肉類といった高価で換金しやすい商品が犯罪の標的となっており、オンラインマーケットでの転売が横行しています。また、盗品がレストランやカフェへと流通するブラックマーケットの存在も指摘されており、これらが組織的な犯罪であることを裏付けています。

一方で、VIC州政府の対応は、後手に回っている印象を受けます。暴力的な事件が相次いでいるにもかかわらず、重大犯罪に対する法整備はようやく動き出したばかりで、小売業従事者の保護を目的とした法案も「年内に提出」といった、先送りの姿勢が目立ちます。

被害額はすでに年間90億豪ドルに達しており、企業の収益や雇用にも深刻な打撃を与えている状況です。同州政府には、迅速かつ実効性のある対策が求められています。(本田歩)

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ウェルス編集部

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