オセアニア農業の歩み「カノーラを巡る外交の綱引き」

今週は、中国によるオーストラリア産カノーラの輸入再開の動きに注目しました。2020年に悪化した両国関係は、新型コロナウイルスの起源調査をめぐる対立を発端として長らく停滞した後、関係改善が進んでいますが、さらなる一歩として注目されています。

一方で、中国とカナダの関係は冷え込みが続いています。昨年、カナダが中国製の電気自動車(EV)や鉄鋼、アルミニウムに関税を課したことに対し、中国は今年3月、報復措置としてカナダ産カノーラなどに100%の関税を課しました。ただ、中国の輸入品カノーラの在庫は7月4日時点で15万9,000トンと、この時期としては過去4年間で最も少ない水準となっています。

こうした中、中国はオーストラリアに対し、代替供給国としての期待を寄せていますが、オーストラリアの今年のカノーラ輸出の多くは欧州連合(EU)などの既存顧客に割り当てられる見込みで、中国が十分な調達量を確保できるかは不透明です。国際政治の波が、農産物の流通にも大きく影響している現実が、あらためて浮き彫りになりました。(本田歩)

 

 

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