気分の良さに紛れて

必要な食材がなかったので、近所の小規模スーパーまで車を走らせた。歩行器で体を支えた高齢女性がステッキで陳列棚の奥にある牛乳のボトルをつついている。ボトルを手前に引き寄せようとしているようだが、うまくいなかない。見かねて「取りましょうか」と言って買い物かごに入れてあげた。特に反応はなかったが、人助けをするのは気分が良い。

残念ながら必要な食材はなかったので、少し離れたスーパーまで車を走らせた。駐車場で車から降りると、マンゴーの入った段ボール箱を抱えた女性が歩きながら近づいてきて、「ドアを開けてくださらない」と言う。一瞬、戸惑ったが、隣のセダンの後部ドアを開けてあげた。「ありがとう。助かったわ」。知らない人に車のドアを開けてほしいと頼まれたのは生まれて初めてだったが、人助けをするのは気分が良い。

すっかり気をよくしてスーパーで買い物をし、自宅に戻ったが、必要な食材を買うのを忘れてしまった。(城一)

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