第8回 ネット通販が人気の粉ミルク
中国の粉ミルク市場の2014年の市場シェアは、販売量では国産が45%、海外産が55%、販売額では国産が40%、海外産が60%と、いずれも海外産が優位だ。その背景にはインターネット通販の利用者急増がある。
ネット通販での販売価格は小売店と比べて格段に安い上、品ぞろえも豊富で、海外の有名ブランドの製品はほぼ手に入る。上海市内の小売店で販売されている米ファイザー・ニュートリションの中国産粉ミルクは1缶約250元(1人民元=約18円)だが、ネット通販だと200元程度。まとめ買いでさらに安く買える上、自宅に配達される。
海外産の代理購入サイトも少なくない。個人が海外から商品を取り寄せる方法は、輸入関税などを免れる「グレー」な事業モデルだが、価格の安さから市場は拡大を続けている。オーストラリアのベビーフード会社ベラミーズ・オーストラリアは、中国の通販サイト「天猫商城(Tモール)」と「京東(JD.com)」に出店しているが、同社の粉ミルクは代理購入サイトで50元程度安く入手できる。
業界調査サイト「産業信息網」によると、14年にネット通販で粉ミルクを購入した人は購入者全体の28%を占め、11年から倍増した。今年はさらに拡大して、小売店を上回る見通しだ。

■FTA締結も後押し
中国の調査会社、艾瑞咨詢(アイリサーチ)によると、中国の14年の乳幼児用粉ミルク業界の市場規模は682億7,000万元で、18年には1,000億元規模に達するとみられている。
拡大する市場を前に、需要取り込みを図るオーストラリア企業も少なくない。食品雑貨卸売り大手のメットキャッシュは昨年10月、天猫商城に出店。中国向けに乳幼児向け粉ミルクの販売をスタートした。
乳幼児用粉ミルクメーカーAUTILIは同12月、オーストラリア郵便局と提携し、中国向けの粉ミルク直送サービスを開始した。また、ビタミン剤メーカー大手ブラックモアズも今年1月、乳業大手ベガ・チーズ傘下のタトゥーラ(Tatura)と共同で打ち出した乳幼児用粉ミルクを国内外で発売。同月には、天猫商城で販売を開始している。
オーストラリアでの粉ミルク生産に投資し、中国市場を狙うメーカーも出始めた。オランダの乳業大手Geo-polandの中国法人、荷仕蘭(中国)乳業は今年1月、オーストラリアの粉ミルク工場に投資したと発表。これまで、オランダから輸入した粉ミルクを中国向けに提供していたが、今後は全面的にオーストラリアからの輸入に切り替える。
オーストラリアと中国の自由貿易協定(FTA)が昨年12月に発効したことで、さらに追い風が吹き始めた。オーストラリア産粉ミルクにかかる関税は、発効時に15%から12%に、今年1月1日には9%に引き下げられた。今後4年以内に撤廃される。
■第2子開放で需要増
中国政府は今年から、全ての夫婦に対して第2子の出産を認めた。中国の有識者は、第2子開放により「子どもが少なくとも毎年200万人ずつ増える」と予測。オランダの金融機関ラボバンクのアナリストはリポートで、「全面開放後は粉ミルクの需要量が毎年10%増える」と分析している。
豪中FTAや1人っ子政策の撤廃が、中国での粉ミルク需要の拡大につながることは間違いない。オーストラリアが今後、国内供給を確保しながら中国への輸出を増やせるかが課題となるだろう。
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