オセアニア農業の歩み「環境政策と産業のはざま」

今週のトップでは、全国気候リスク評価(NCRA)について取り上げました。干し草価格の高騰や本年度に予想される生乳生産量の減少は、気候変動の影響がすでに深刻な段階にあることを如実に示しています。

NCRAは、飼料の入手が降雨不足や干ばつによってますます制限され、経営への圧力が高まると指摘しています。実際に干ばつの影響を大きく受けたビクトリア州では6月、穀物干し草の価格が前月比で北部で39%、西部で34%上昇し、ギプスランドでは52%という大幅な上昇が確認されました。オーストラリア東南部では干ばつが毎年のように発生しており、暑さに強い牛の導入や牛舎の設備改善など、持続可能な畜産体制を構築する努力が欠かせません。

今週は、オーストラリアで拡大が見込まれる飲料容器回収・保証金制度(CDS)を巡る懸念についても報じました。制度の「リサイクル率向上」という目的に対しては、幅広い賛同を得ていますが、すでに経営が厳しい状況にあるワイン業界や小規模事業者にとっては、新たな費用負担が大きな課題となっています。環境政策の実効性を高めるためには、産業界の実情に配慮した制度設計が必要だと思います。(本田歩)

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ウェルス編集部

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