第12回 プラントベース・ミルク
今回は代替ミルクについてみていきます。代替ミルクは他の代替食品と比較して顧客のターゲット層が広く、市場は生活費が高騰する昨今も衰えることなく拡大しています。
消費者が植物性ミルクを選ぶ理由には、健康面(乳糖不耐症または乳製品アレルギーがある)、倫理面(動物愛護推進・環境負荷の軽減)、個人の嗜好(しこう)などがあります。特に乳糖不耐症は、東アジア人やアボリジニ、トレス海峡諸島民の場合70~95%、白人の場合5%の確率で症状を抱えているといわれ、代替ミルクの需要が一過性ではないこともうなずけます。
業界団体デアリー・オーストラリアが2021年に発表したデータでは、植物性ミルクがオーストラリアのミルク市場に占める割合は8.1%でした。また、植物性ミルクのみを購入する家庭は全体の2%に留まり、40%の家庭では牛乳と植物性ミルクの両方を購入していました。
多くのデータが代替ミルクの継続的な市場拡大を予測していますが、即座に牛乳にとって代わるものではなく、「ミルクの選択肢」として定着するとみられます。
■ビタソイは生産量が過去最高に
植物由来飲料ビタソイは昨年、年間生産量が7,000万リットルを超え、過去最高を記録する見通しを明らかにしました。2002年、創業当初の年間生産量はわずか1,000万リットルでした。豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク、ライスミルク、ココナツミルクを販売しており、過去5年間で最も人気が高かったのはアーモンドミルクだったそうです。
ただ、同社はオーツミルクの需要が急速に伸びており、近くアーモンドミルクを追い抜くと予想しています。オーツ麦は最も持続可能性の高い作物で、環境負荷が少なく、味にクセがないのが特徴です。
また、ソイミルクは、依然より人気が落ちたものの、栄養面で牛乳を代替できる唯一の植物性ミルクであり、今後も一定の需要を維持すると分析しています。
■カフェでも一般的に
コーヒー文化が根付くオーストラリアにおいて、カフェのミルク消費量は侮れません。代替ミルクは牛乳と違い、油分が多いためラテアートの泡が立ちにくく、扱い辛いという問題がありましたが、代替ミルク業界はすぐさま改良を重ね、現在は各ブランドで質感を調整した「バリスタ・エディション」を販売しています。
ここでもオーツミルクが1番人気で、カフェで使用されるミルク全体の20~30%を占めています。舌ざわりが滑らかで、さっぱりした味わいがコーヒーの味を邪魔しないのだとか。
一方、サニタリウムのカフェ・フードサービス部門の担当者によると、ニュージーランドではココナツミルクの人気が非常に高いそうです。
■これから人工牛乳にも注目
精密発酵技術により牛乳と同等の味や成分を持たせた、人工牛乳の開発も進んでおり、代替ミルク市場では今後も興味深いニュースが続きそうです。【文:ヒューズ美幸】
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