湖城の窓から「値上げしたら下げにくい」
本欄の上にあるオーストラリアの牛の価格の目安となる東部地区若齢牛指標価格(EYCI)は、2022年初頭から下落が始まり、後半に一時盛り返すも現在まで下げ基調です。現値は1年前の約半分にまで落ち込みました。しかしこれほど牛の価格が下落したのに、スーパーの牛肉は値下がりしていません。それどころかニールセンによると、牛肉の小売価格は昨年4%上昇しています。なぜでしょうか。
調べてみると、加工業界は、牛の価格が高かった過去何年もの間に得られなかった利益を回収中。確かに牛の供給が減少した数年間、加工業界は全体的に赤字構造に苦しんでいました。利益率が好転した現在、効率や持続可能性の向上に向けた投資がようやく可能になったという声も出ています。高インフレで生産コストも上がる中、牛の価格下落で得たマージンを、そのまま下流に流すという訳にはいかないようです。
一方、競争が厳しいと主張する小売業界は、値下げしていると主張しています。ただし人件費や燃料費の高止まりが影響し、わずかに値を下げたのは1、2カ月前から。
EYCIは若齢牛なので、育つまでにタイムラグが発生するということもあるでしょう。しかし仕入値の下落は赤字の補填や生産・物流コストの上昇で相殺されてしまったという部分が大きいようです。
消費者は高い牛肉に手を出せず、昨年の牛肉の消費量は全体で7.3%減少し、部位によっては30%も減りました。消費者にとってもサプライチェーンにとっても、インフレの沈静化が望まれます。(編集長)
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