第5回 試されるオージービーフ
■豪中FTA締結
中国とオーストラリアは昨年11月、9年7カ月に渡る交渉の末、自由貿易協定(FTA)を妥結した。オーストラリア産の牛肉、乳製品、ワインなど農作物に対する関税は、向こう4~9年以内に撤廃することが決定。フランシス・アダムソン駐中国オーストラリア大使は中国紙「財経」に対し、「中豪FTAは今年6月末までに正式に締結され、年内には効力が発生する見通し」と明らかにしており、各界から大きな期待が寄せられている。
中国のオーストラリア産牛肉に対する関税は最大25%とされ、これが撤廃されれば、少なくとも関税分はコストを低減できることになる。
また豪中FTAでは、オーストラリアは中国からの投資がしやすくなるよう、規制のハードルを引き下げた。海外企業によるオーストラリアへの投資は、国有企業による投資を除けば、2億4,800万豪ドル(1豪ドル=約96円)を超える場合、外国投資審査委員会(FIRB)の審査が必要だが、中国に対してはこの基準額を10億7,800万豪ドルに引き上げるとした。これは米国や日本、韓国などとのFTAと同じ条件で、現在は全体の3%程度にとどまる中国からの投資を大きく後押しするとみられている。
財経によると、黒竜江省で食品の輸入などを手掛ける黒竜江天順源清真食品は1997年からオーストラリア産の牛肉・羊肉を輸入しており、昨年の輸入量は1万2,000トン。同社の韓魯波董事長は、同社がオーストラリアの農場や加工工場の株式を取得することで合意したことも明らかにしており、今後、同社のように牛肉輸入量を増やすためにオーストラリアに投資する中国企業も増える見通しだ。

■「評判がいいわけではない」
ただ、中国では牛肉の密輸が横行しているのも現状。中国紙「南方週末」によると、中国の2013年の牛肉消費総量は約900万トンで、このうち200万トンは密輸という。内訳は、ブラジルからの輸入が43万トン、インドが47万トン、米国が9万トンなどで、ブラジルとインドからの密輸量は、正規輸入量では首位のオーストラリアの約3倍に上る。さらに米国産牛肉についても、近く中国への輸入が解禁されるとみられており、実現すれば輸入量が急拡大する可能性も高い。
豪中FTAの締結が今後、中国のオーストラリア産牛肉輸入を後押しすることは間違いない。ただ、上海市の市場関係者が「オージービーフは他国産の牛肉と比べ、消費者からの評判が特別良いわけではない」と明かすように、課題が全くないわけでもない。前回も述べたように、オーストラリア産牛肉が「正式に輸入できる牛肉としては高級品」いう位置づけである以上、関税撤廃後も価格面だけで勝負するのは難しい状況にあると言える。
数年後に豪中FTAによるゼロ関税が実現し、現在禁止されている国々からの輸入が解禁される時までに、オーストラリア産牛肉がどう変われるか。まさにその時、オージービーフの本当の力が試されることになりそうだ。
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