第58回 きょうのランチは何?毎日の選択で健康を
のんびりオージーも忙しくなった現代。ランチ業界の成長が目覚ましい。これまでも昼食を外で買う人はいたが、利便性や食べ物の選択視が格段に増えた。カフェやレストランに加え、持ち帰り用や調理済み商品を強化するスーパーマーケットやコンビニエンスストアでも品ぞろえが充実しつつある。

昼休みでにぎわうフードコートの屋外席。シドニーで
一般的な「ランチ外食費」は1週間当たり70豪ドル(1豪ドル=約80円)とか。ランチをめぐる状況は豊かになったが、必ずしも健康的な食事が売れているわけではない。軽んじられがちなランチへの意識を高め、従業員の健康維持や生徒の食育に生かそうとする動きも出てきた。
シドニー大学でこのほど、子ども向け食品のマーケティングの専門家、同大学で「大学での食」に取り組む職員、金融大手AMPで「職場での食」に取り組む担当者計3人による講演会「お弁当を作っているのは誰?─学校と職場での昼食」が開かれ、聴講した。
■若者の食生活、周りは寛容
シドニー大学では現在、入学してくる10~20代のヤングアダルト世代について、食習慣の基盤形成で重要な時期と判断し、学生が健康的な食生活を送るようになるための取り組み「ヘルシー・シドニーユニバーシティー」を進めている。同事業に参加するエリー・ハウズ氏によると、学生は子どもとは違い、飲酒も食事内容も「本人の自由」。さらに比較的健康である年代のため、「暴飲暴食や偏った食生活をしても周りが許してしまう世代」だという。
同大では、食品会社と提携しての健康的なメニューの提供やコミュニティーガーデンの設置、テスト期間に図書館で無料のフルーツを配るなどの取り組みを行っている。それでも、売れ行きが良いのはエナジードリンクやジャンクフード。今後は食の生産者とつながるためのファーマーズマーケットなどの開催を視野に入れつつ、「食と健康への理解を深めるためにも、大学が継続的に健康的な選択肢を提供し、その良さをアピールすることが大事」とハウズ氏は考えている。
■健康ランチをアプリで予約

オフィス街のキオスクには、果実やナッツなど健康おやつ
AMPで従業員の健康増進につながる職場作りを進めるのは、トム・トレフィー氏。食事の時間を大切にできるよう、ゆったりとした共用の飲食スペースを整備している。米グーグルのように無料の社員食堂の設置も検討したが、「社員を社内に閉じ込めることになる」として断念。「外の空気に触れる、外部の人と接触することも大事」との考えだ。
その一方、AMP自社ビル内に入居する飲食店に対し、不健康なメニューに一定の販売規制を設けることや、忙しい社員向けに、携帯アプリで事前に健康的なランチをテナント店で注文できるシステムの導入などを検討している。テナントの販売メニュー規制などは、自社ビルだからこそできる荒業で、シドニー大で同様のことをすると「売り上げが落ち、テナントから訴えられる」(ハウズ氏)そうだ。
■リーダーシップの欠如
食品マーケティングに詳しいテリザ・デービス氏が指摘するのは、個人の食事の選択を動かす、食品大手の圧倒的なマーケティング力。子どもの肥満問題の矛先が、食品会社ではなく母親に向かいがちであることに言及し、「たとえ保護者が食育に熱心でも、大手企業の影響力とは雲泥の差。成人でも同じ。肥満は個人の問題とするのは簡単だが、それが解決につながらないのは明らかだ」という。シドニー大のハウズ氏もこれに同調。健康的な食生活を推進していく上で、民間企業を規制することのできる政府の力は不可欠だと話すが、「食品会社に圧力をかけることは雇用の維持に影響するため、政治家は消極的」だそうだ。
「最大の障害は政治リーダーシップの欠如」とする同氏の主張。自分の健康管理は自己責任なのではとの思いもあるが、肥満問題が一向に改善しないオーストラリア。お上の「鶴の一声」が必要なのかもしれない。
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