第49回 日本酒をオージーが語る大切さ!酒ソムリエのピーターさん
「Japanophile(ジャパノファイル、日本が大好きなおたく)という言葉を知っていますか?私のことですよ」とおどけるピーター・ギブソンさん。元テニス選手で、実業家でもあるピーターさんは、日本酒を愛する「酒ソムリエ」の顔も持つ。シドニー北部の自宅を訪ね、日本とのつながりや、オーストラリアでの日本酒の受け止められ方などを聞いた。
日本語を流暢に話すピーターさん、日本との出会いは約30年前だ。プロテニス選手としての活躍を目指していたピーターさんは、キャリアを積むためアジアのテニスツアーに参戦することを決意。20歳のときに大阪の伊丹空港に降り立った。それ以降、日本でプロ選手として契約を結ぶなど、「ずっと日本との関わりが続いている」という。

シドニーに拠点を移し自らテニスクラブなどの事業を始めてからも、年に2~3回は日本を訪れる生活。ピーターさんは日本プロテニス協会の最初の外国人メンバーでもあり、日本中を回ってテニスのコーチ、講師、教育の仕事をしたという。シドニーでの事業は非常に順調だったが、好条件を提示されたため2005年に売却。07年には大手企業の要職をオファーされ、企業勤めを始めた。その間も日本への興味は衰えず、理由をつけては毎年日本を訪れていたという。ちなみに家族で日本に強い関心があるのはピーターさんだけだそうだ。
11年の東日本大震災発生後、オーストラリアでは12~13年にリストラの嵐が吹き荒れた。震災復興支援をしたいと思いながらも忙しさで実現できず、心苦しい思いをしていたピーターさんは、ここぞとばかりに日本行きを決意。福島市から大船渡まで被災地を300キロ以上歩く東北行脚に出た。訪問先では子どもたちにボランティアでテニスを教えた。

■売り込み力強化を
「自分の情熱は日本、スポーツ、酒にある」と笑うピーターさん。東北から戻り、仕事をすぐに探す必要もなく、情熱に従って生きようと考えたときに、和食がユネスコの無形文化遺産に登録される一方で、日本酒がそれほどの評判を確立していないことに着目。「ビジネスマンとして日本酒のデータを分析し、オーストラリアでの展開に関心を持った」という。
オーストラリアでは一般的に、日本酒は全く知られていないか、または一昔前の低品質の日本酒を飲んだ苦い経験など、ネガティブな反応がまだ多いが、「ここ数年で見直されてきている」という。ピーターさんは日本酒業界で交流を広げつつ、酒ソムリエの資格を取得。オーストラリア市場について「日本酒はすでにあるが、飲食店スタッフなどへの教育が必要」とみる。さらに一番の課題として、ほかの酒類と比べて「マーケティング力が十分でない」ことを挙げた。「オーストラリアでの日本酒のプロモーションは、自分を含めて5~7人の個人が担っている状態」だそうだ。
■オージーが酒を語る意義
ピーターさんは現在、コンサルタンシーの忙しい仕事の傍らで、日本酒のプロモーションイベントを開催している。ピーターさんによれば、日本の酒蔵の中では最近、海外の酒専門家とタッグを組むなど、これまでにない柔軟な動きが出てきているという。ピーターさんは「海外市場に日本酒を売り込むには、現地の言葉で、言語的な説明をしっかりする必要がある」と考えており、オージーのピーターさんがオーストラリアで、日本酒を一から説明することはとても大切だという。
1985年にシドニーに16軒しかなかった日本食レストランは今や900軒以上に増えた。日本食ブームと日本への旅行ブームという二つの大きな流れの中で、日本酒が今後オーストラリアで広く受けいれられるようになるのは「時間の問題だよ」と、ピーターさんがビジネスマンの顔を見せた。
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