第27回 農業ロボット会合!これからは小型化が鍵?

日立製作所と日立造船、ヤンマーの3社がニューサウスウェールズ(NSW)州で先月、準天頂衛星初号機「みちびき」の電波を活用した自律走行型ロボットトラクターによる農作業を成功させた。

農産物の増産が求められる中、農家の高齢化や生産コストの高さなどの解決策として、「農業ロボット」に注目が集まっている。シドニー大学で開かれた、一回目となる農業ロボットのサマースクールを訪れた。

5日間にわたって開催された同スクールでは、世界から約60人のエンジニアや研究者が参加。綿花や園芸作物業界など、自動化に積極的な分野の関係者による講演もあった。

ロボットと聞いて壮大な未来型プロジェクトを想像していたが、話題になっていたのは意外にも、農作業の生産性を高めるための小型機械。農業ではまだ、農家が肉体労働の比重が高い日々の作業に忙殺され、農場管理や経営戦略の策定に十分な時間が取れない状態。世界的な食料需要の高まりに応えるにはまず、農家が生産性向上に取り組める時間の余裕が必要、という考えだ。

英ハーパーアダムス大学のサイモン・ブラックモア教授は、これからは環境への負荷が小さく応用力のある小型機械の時代と主張する。これまでは規模の経済性の追求で大型トラクターがもてはやされてきたが、研究の結果、大型機械がこれまでもたらした効果と同じくらいの問題が浮き彫りになったという。

教授はまた、オーストラリアで使用されている大型トラクターが全て輸入されていることに言及。オーストラリアで新興企業がニーズに合った小型機械を自ら製造するようになれば状況が変わるとし、今後農業ロボット業界を先導するのは柔軟な新興企業だと主張した。

農業ロボットの新興企業スワームファーム(SwarmFarm)の創立者で農家のアンドリュー・ベイト氏も、農機の大型化に異を唱える。自動車組立工場を例に挙げ、一つのロボットが全作業を行うのではなく、作業を分割し、小型機械で対応すべきとの考えだ。機械の購入コストも低く抑えられる。同社はシドニー大の現場ロボット研究所(ACFR)と提携し、雑草を駆除する小型ロボットを開発している。

また、オランダのワーヘニンゲン大学では、最近増えてきた手間のかかるフリーレンジ(平飼い)での鶏飼育で、卵を回収するロボットの開発を進めている。

■農場管理とデータ

質疑応答では、農業ロボット開発で、「データの収集」が先行し過ぎているとの意見が出た。農家は自らの農場データや公共のデータなど、すでに「必要な量の3倍」もの膨大なデータを保有しており、さらにデータ収集方法を極めても、自分の農場に有益な情報をどう取り出すのか、農家に対するデータ活用ノウハウの伝授が追いつかなければ、意味がないとの指摘だ。

ここでも小型機械が話題になった。情報収集は政府機関などによる大まかなデータのほかに、「ドローン(drone)」と呼ばれる無人のラジコンヘリコプターなどで自分の農場の様子がピンポイントで必要なときに見ることができれば十分との主張だ。NSW州オレンジ近郊と南オーストラリア州クレアバレーのワイン用ブドウ畑では現在、研究グループにより、畑を回ってデータを集め、ブドウの収穫量を正確に予想する小型ロボットの試験運用が行われている。

■人との「共存」

ロボットによる労働の肩代わりは、慢性的な人手不足の農業にとって福音だが、雇用の減少や、結果としての地域社会の崩壊などが懸念されている。オーストラリアは山火事が多く、消火や救助活動など、地域住民の災害時の「助け合い」が重要視されている。農家は安定した労働力を手に入れられる一方、一段と孤立化が進む恐れもある。

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