第5回 ハチはこわくない?サザランドで大接近
週末に「ハニー・ツアー」に参加した。会場はシドニーの南35キロ、車で50分ほどのサザランド(Sutherland)にあるサザランド・ビーキーパーズクラブ。ちなみにサザランドは「オーストラリア発祥の地」とされる。キャプテン・クックが英ロンドンに帰港後、報告書にそう記したことから。東京都中央区の姉妹都市でもある。
午前10時から2時間のツアーで、参加費は19豪ドル(約1,770円)。養蜂(ようほう)について説明を受けた後、防護服を着用し養蜂箱(ビーハイブ)を見せてもらう。遠心分離機を使ってのハチミツの搾り出し作業を体験し、絞りたてを味見。最後はハチミツのテイスティングという内容。

講師は同クラブの代表で、都市部で養蜂を行うアーバン・ビーハイブスの共同創立者でもあるダグ・パーディーさん。ダグさん、どこかで見たことが、と思ったら、実は弊誌特集「不思議の国アリサ(第62回)」で登場いただいている。アーバン・ビーハイブスの活動から、国内養蜂家の経済的苦境、農業におけるハチの大切さなど、幅広い話題を語ってくれた。
ダグさんによると、ハチミツの生産コストは1キロ当たり4豪ドルだが、出荷価格は3.5豪ドルと採算割れ。今年は干ばつによる花粉の不足で不作という。大手ブランドの製品が安いのは、安価な中国産がブレンドされているためだ。価格で勝てず事業継続をあきらめる商業養蜂家が増える一方、趣味として自宅の庭やコミュニティーガーデンで養蜂に携わる人が増えているという。助言を求める声も多く、ダグさんは指南本を8月にも出版予定だ。
ツアーで一番緊張したのは、養蜂箱を開ける時。ハチを見た瞬間に「刺される!」と身を硬くしてしまうが、ダグさんは「ハチを過度に怖がり、排除しようとする姿勢が生活に根付いてしまっている」と残念そう。ルールを守ってさえいれば、ハチは不必要に人間を襲わない。そういえば、ダグさんは長袖シャツに防護帽子をかぶっていたが、素手でハチをさわっていた。自分も次第に慣れ、お尻を振ってコミュニケーションを取るハチがかわいく見えてくる。ちなみに防護服が白色なのは、ハチミツ泥棒のクマと見間違えられてハチに襲われないようにするためだ。
「ミツバチが絶滅したら人類は4年で滅ぶ」と聞く。ハチが担う受粉の役割は地球上の植物、農作物の維持に欠かせない。世界的、特に米国でハチ不足が顕在化しているが、オーストラリアも例外でなく「数年後に大量死が発生してもおかしくない」そうだ。ただ、これまで自然な受粉が「当然」だったオーストラリアでは、政府や大手企業、農家ですら対応に熱心でないという。今回のツアー参加者は3人のみ。もっと多くの人に来てもらいたい。
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