第2回 日本の醤油会社、驚きの毛刈り法開発!

羊の毛刈りというと、どのような方法を思い浮かべますか?おそらく、バリカンを使って一頭ずつ刈り取っていく姿を想像するのが一般的だと思います。しかし現在では何とも画期的な方法が開発され、まるで着ているセーターを脱がすかのように羊毛を収穫する技術が開発されています。今回はそんな驚きの方法についてご紹介します。
羊の毛刈りは、豪州の関係者にとって頭の痛い問題でした。きれいに刈り取るには熟練技術が必要なのに加え、体重70キロ程の羊をひっくり返したり立たせたりするのは重労働です。羊にとっても毛刈りは命がけで、バリカンの刃で出血すると、傷口から病原菌に感染する恐れもあります。
そこで豪州が開発したのが、バイオロジカル・ウール・ハーベスティング(BWH)と呼ばれる技術です。これは上皮細胞成長因子(EGF)の働きを利用したもので、EGFを羊に注射すると羊毛の成長が一時的に止まり、羊毛に切れ目が入ります。羊には、羊毛が木などに引っ掛かって落ちないよう薄手のネットを着せ、そのあと数週間待ちます。すると下から新しく生えてきた毛に押されてその切れ目が皮膚表面にまで押し出されてくるため、バリカンで刈ることなく、まるでセーターを脱がすかのように毛皮を取ることができるのです。
抜けたところからはまたすぐ新しい毛が生えてきて、副作用もありません。かつてEGFは非常に高価で実用化は困難とされてきましたが、キッコーマンの提携企業であるヒゲタ醤油が、大量かつ安価に供給する方法を開発。コスト的にも手で刈る場合の10分の1程度に抑えることに成功しました。
これならバリカン刈りのような熟練技術もいらず、労力も軽減され、さらに羊毛の質も向上します。また羊に余計なストレスをかけることもありません。日本の醤油会社が豪州の羊毛産業にこんな形で貢献していたとは、まさに驚きです。

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