第43回 アクティブな食育の授業(下)

シドニーのボンダイにある小学校では食育の授業の一環で、児童が菜園の脇にある建物で調理実習を行っている。主に横の菜園から採れた季節の野菜を使用して料理を作っている。ここでも、小さなグループにそれぞれボランティアが付く。グループごとに作るものも違い、すべての料理をみんなでシェアする。

調理台の横では、料理専門家の臨時職員が「学期始めだから、包丁の使い方を忘れていないか再テストします」と言い、児童1人1人の手際をチェックしている。驚いたことに、小学校中学年の児童が重たい包丁を握っている。子どもだからと言って、子ども用の調理器具を渡すのではなく、大人用を使わせる。そこに意図がある。

また子どもたちは部屋を歩き回って作業をし続けている。横で見ていると、あっという間にテーブルのセッティングも完了。暇を持て余さない、何とも活発的な食育だ。

■15年までに1割の学校に導入

こうした食育の授業を全国に広めるためには、資金が重要となる。補助金の分配も限られているため、授業の費用は大半が小学校負担となる。ボンダイの小学校のように、菜園と調理実習で各1人ずつ臨時職員を雇っているところもある。一方、資金が限られている小学校のために、「ステファニー・アレクサンダー・キッチンガーデン・ファウンデーション」では小学校の先生を対象にした訓練プログラムも実施している。ただ、多忙な先生が常に菜園の管理ができる訳でなく、特に休校中の管理が大変な小学校もあるという。

現在、同ファウンデーションの食育を導入しているのは全国267校。2015年までにさらに400校増やし、665校まで拡大させることを目指している。計算では、全校の1割が導入することになる。「そうなれば政府も本腰を入れて、取り組んでくれると思う」と話すのは、同ファウンデーションのコーディネーターを務めるジェシカ・シーゲイトさん。

同ファウンデーションの食育の目的は、キャリアとして食品産業や農業を目指す児童を増やすことではなく、机の上だけでは決して学ぶことができない「野菜を育てて収穫し、それを調理して食べる」ことを通じて、食に関する良い経験を与えること。

ジェシカさん曰く、「あまり学校に行きたがらない児童も多いのに、きょうは食育の授業があるからと学校に行くのを楽しみにしている児童もいる」とか。子どもたちの高らかな歓声がきょうも学校の菜園に響く。

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