第41回 実店舗を持たない販売
オーストラリアではオンライン販売の波により、実店舗での販売が困難になりつつある。街中ではよく「リース終了に伴う在庫一掃セール」といった看板を目にする。こうした波は、途上国の生産者支援につながるフェアトレード(FT)商品販売にも押し寄せてきているように感じる。
日本のFTとの一番の違いは、FT商品販売を主体とした店舗が少ないことではないか。そんな疑問を胸に抱きつつ、FT商品販売最大手のオックスファム・オーストラリアと、スリランカ産のFT商品の卸に注力するインポート・アンツに話を聞いた。
全国でフェアトレードショップを展開するオックスファムは、一時期23店舗を開設していた。だが、今は15店舗まで縮小。今年は4月にニューサウスウェールズ州第2の都市ニューカッスルで店舗を閉鎖し、その後11店舗まで削減する予定だ。
「FTは生産者を支援することと、収益から経費を引いた残りをオックスファムの活動資金に充てるため非常に重要な事業」と話すのは、オックスファムで地域統括責任者を務めるマシュー・パーンハムさん。
現在は実店舗販売とオンライン販売、スーパーや企業への卸が大体同じくらいの割合だという。このうち、一番伸びているのは、スーパーでの販売または企業内での消費向けに、コーヒーや紅茶、チョコレートなどの食品のみを販売する卸事業だ。始めて3年ほどの事業のようだが、着実に成長してきている。販売方法の焦点は「収益が上げられること」。生産者に安定的な受注を可能にするためには非常に重要なことという。
■ココナッツ繊維のたわし
一方、小規模な自社店舗展開よりも卸のみに注力するFT団体がある。インポート・アンツはスリランカの小さな生産者団体からFT商品を輸入する。ウェブサイトで商品の情報を提供しながらも、値段は載せていない。
キム・グッドさんは、「大手の小売店でFT商品が扱われるようになり選択肢が増えれば、FT商品を選ぶ消費者も増える」と意気込む。そのため、ウェブサイトやソーシャルメディアでの情報発信のほか、雑誌などで積極的に商品を起用してもらえるよう働きかけている。
象のフンから作った紙や、ティーバックを再利用して作られた飾りなども扱っているが、特に印象に残ったのはココナッツ繊維などを使ったタワシだ。筆者は非常に懐かしい気持ちに包まれた。
グッドさんいわく、ココナッツ繊維のタワシは日本で発明されたものの、現在は大半がスリランカ製だという。「FT商品には両極端なものが多いが、一般的な消費者に受け入れられるものを作りたい」。デザイン分野からFTに興味を持った背景もあり、商品開発にも熱が入る。
FT商品専門店は多くなくても、一般的な小売りでFT商品の幅が広がる。それがオーストラリアのFTの流れなのかもしれない。
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