第74回 【特別インタビュー】メルボルン市場の信頼を預かるのは、Rudge Produce Systemsだった!
南半球最大級の青果取引拠点として知られるメルボルン市場は、67ヘクタールの敷地に約500の市場業者が拠点を構えています。日の出前には卸売業者や生産者、バイヤーが集まり、新鮮な果物や野菜、花の取引が行われています。この市場は、豪州における生鮮農産物流通の中心的なハブとなっています。
冷蔵保存や追熟、梱包、物流の事業者が常駐していますが、市場活動を支える第三者専門家の存在に気づいている人はあまりいません。
その1つが、メルボルン市場を拠点とするRudge Produce Systems (RPS)です。園芸作物の独立した検査および試験サービスを提供しています。
「私たちは、暗闇で起きていることに可視性と透明性を与える光のような存在です。常に見えているわけではありませんが、大切なのは、トレーダー、生産者、小売業者が私たちの存在を知っていて、いつでも呼び出せるということです」と、RPSのマネージャー、テリー・ラッジ氏は語ります。
RPSは中立的な第三者であり、特定の卸売業者、生産者、バイヤーのいずれにも属していません。専任の検査員が園芸作物の品質、等級、損傷、温度などの状態を評価し、報告しています。ラッジ氏は、「私たちのクライアントは、私たちを市場における“公平な目”として見ており、保険請求や紛争解決、調査の際に頼っています」と述べています。
■公正な判断を支えるのは何か?
豪州には、日本のような公式の等級制度や農産物の検査制度がありません。品質基準や製品の等級は、生産者とバイヤー間で直接合意されるのが一般的です。
園芸取引行動規範(Horticulture Code of Conduct)は、取引の透明性と明確さを確保するため、2007年に導入されました。しかし、この規範が生鮮農産物取引の現場で日常的に使用されることはほとんどありません。テリー氏によると、RPSの担当者はこの規範に基づく園芸作物査定者として正式に登録されていますが、実際の査定の大半は、輸送中の損傷や保険請求に関するものだそうです。
■問題発生時に判断を下すのは誰か?
たとえば、バイヤーが「桃の出荷が等級を満たしていない」と主張した場合、生産者は「出荷時には最高等級だった」と反論するかもしれません。こうしたやりとりは日常的によくあります。しかし、温度変化による傷みや輸送中の損傷が関与すると、問題解決は困難になります。そのような場面でRPSのような独立したチームが呼ばれることが多くあります。
毎日何百件もの取引が行われていますが、RPSへの実際の出動依頼は週に1-2回程度にとどまっています。多くの問題は、当事者間の直接的な話し合いで解決されています。生鮮農産物の取引は時間的制約が非常に大きいため、遅延を減らすことが品質や価格への影響を最小限に抑えることにつながります。最終的に重要なのは、レポートに基づいて導き出された判断を双方が受け入れ、合意できるかどうかという点です。
■検査の透明性が国境を越えて重要な理由
RPSが作成するレポートは、単なる記録ではありません。今後の輸送や契約内容の改善に活用されています。
たとえば、日本が豪州からテーブルグレープや柑橘類を輸入する際、温度管理がどう行われていたか、到着時の果実の状態についての質問がしばしば寄せられます。こうした場面では、出荷前に品質や温度を確認し、証拠として残すことが非常に役立ちます。
検査の際に独立した立場でその場にいることは、大きな意味を持ちます。それは保険会社との信頼関係だけでなく、国際的なバイヤーとの信頼構築にもつながります。
「最終的には、そこに誰がいたか、その人物が信頼されているかどうかに尽きます。それこそが、次の取引につながるのです」とラッジ氏は語ります。
この言葉は、豪州の輸出業者と取引している日本の関係者にとって、重要な示唆を含んでいます。輸送や取り扱いに対する信頼は、規則だけで保証されるものではありません。すべての工程において、誰かが実際にその場にいて見届けていたという事実が、信頼を強化するのです。
本記事に関するお問い合わせは、Rudge Produce Systems のテリー・ラッジ(Terry Rudge)氏までご連絡ください。
Email:trudge@rudge.com.au
投稿者プロフィール
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豪州在住の農業ビジネスコンサルタント。
農業ビジネスに従事後、2011 年に渡豪。三菱ケミカルとビクトリア州政府が共同運営する植物工場プロジェクトや、現地企業が運営する日本いちご栽培プロジェクトに参画。農業コンサルティングのイノプレックスや、Bisnis Asia のコンサルタントとしても活躍中。2020 年に深谷市主催のアグリテックコンテストで企業賞を受賞。
メールアドレス:imabayashi@innoplex.org
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