美味の暴力

舌に自信はあった。オーストラリアの食にも慣れてきた頃、街中を歩いていると日本食レストランの看板が目に入った。見慣れた日本語が書かれた看板と懐かしい料理の匂いに食欲をそそられ立ち入った。

大好物であるカツ丼を注文した。久しぶりのカツ丼にテンションが上がる。そして、カツをほうばる。信じられないくらいおいしかった。

食べ終え、満足した筆者は「この豚カツおいしかった」と呟くと、同行していた友人に「それ豚肉じゃなくて鶏肉だよ」と突っ込まれた。驚いて注文を確認すると、確かに筆者が食べたのはチキンカツ丼だ。日本のカツ丼は豚肉が主流であるため勘違いしていた。あまりにおいしかったので舌が狂ったのか。いや、筆者が何を食べてもうまく感じる貧乏舌だっただけかもしれない。(晴男)

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