第25回 スキーの次は食観光?雪国でそば打ち体験!

ファームステイやビール醸造所・酒蔵の見学ツアーなど、「食観光」が日本で注目されている。オーストラリアでも政府観光局が「レストラン・オーストラリア」と題した外国人観光客の誘致戦略を展開しているが、その目的は食べ物やワインの魅力を伝えることで、観光により深みを持たせることにあるという。日本に帰国した際、新潟県南魚沼地方を訪ねた。

豪雪地帯の同地はコメの名産地であるとともに、つなぎに布海苔(ふのり)という海藻を使ったそば「へぎそば」も有名。田植えや稲刈り、もちつきやそば打ちをはじめとする「いなか体験」ができる上田の郷(さと)で、そば打ち体験を申し込んだ。希望した日は台湾からの学生20人が参加するもちつきイベントがあるとのことで断られてしまったが、翌日に予約できた。

■雪国の食文化が観光資源

今年は大雪ということもあるが、通常冬場はスキー客以外の国内観光客は少なく、そば打ち体験は家族連れが増える夏場が一番にぎやかだ。しかしその一方で、雪を目当てに冬にいなか体験にやってくる外国人観光客は増えているという。今やスキー人気にも陰りが出てくる中、雪そのもの、そして雪で保存した野菜や野沢菜漬け、かまくらで食べるお汁粉、新米のもち米で作ったもちで迎える正月、などの雪国の食生活を、新たな観光資源として売り出す動きが出てきた。

南魚沼市に本拠を置き、名酒「八海山」を生産する八海醸造は新しく、魚沼に醸造施設と飲食店や売店を備えた「魚沼の里」をオープンした。最高品質の酒づくりを軸に据えながら、魚沼の暮らしや雪国の文化を発信するという。施設には日本酒を貯蔵する雪中貯蔵庫があり、ツアーなどを通じて、古くて新しいクリーンエネルギーとしての雪利用をアピールするほか、一見蔵元とは分からないほど地元の食材も幅広く紹介、販売し、「魚沼の食文化」を前面に出している。

■英語のいらない「Omotenashi」?

「いなか体験」の参加者は大多数が日本人だが、最近では台湾からの学生のイベントのように、外国人観光客から「雪を見ながらもちつきをして、日本の正月気分を味わいたい」、「端午の節句に伝統的なちまきを作りたい」などのリクエストが入るようになったそうだ。

そば打ちに実際に参加してみると、慣れない作業だが夢中になってしまい、楽しい。このいなか体験の目玉の一つは、講師が「地元のおじいちゃんやおばあちゃん」で、指導を受けながら昔話を聞き、交流できることにある。英語は全く話せないが、外国人だからといって特別扱いせず、日本語だが手取り足取りの丁寧な指導がまた日本的だとして人気だ。打ったそばは食事スペースで食べることができ、まいたけなど地元の食材も一緒に楽しめる。「地元のおじいちゃんやおばあちゃん」が育てた食材もある。

食事を一緒につくり、楽しむという行為には、交わす言葉が少なくても特別な体験になる不思議な魅力がある。もちろん言葉が分かるにこしたことはないが、同行したオージーの家族も、最初はこちらが通訳していたが、10分後にはほったらかしでも見よう見まねで十分楽しんでいた。日本食ブームを追い風に、外国人の日本への食観光人気はますます高まりそうだ。

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