新・豪州Wagyuと歩む 第3回 砂漠で牧場を(2)
■中東での和牛飼育開始
中東での和牛飼育が始まって、まず始めにしなければならなかったのは牛のコンディションを整える事でした。オーストラリアの検疫農場を出て、陸路シドニーへ向かった牛たちは中東の空港へ到着した時点で既に24時間以上経過していました。空港到着後も、貨物機の荷下ろし許可がなかなか出ずに、飛行機の中に4時間以上とどまらなければなりませんでした。結局、私も手伝って牛をグループごとに手配していたトラックに乗せて牧場へ向かい、牧場について各グループを牛舎に入れ終えたのはそれからさらに8時間を経過してからになりました。
牧場に到着後、飲料水を与え粗飼料をふんだんに給餌し終えると、牛たちも少し落ち着いた様に見えました。幸い、1頭の事故も無く全頭無事に受け入れができました。常駐の獣医師と共に牛を確認して、翌日からいよいよ牛飼いの始まりです。
■異国での牛飼い、和牛肥育の難しさ
牛飼いは、給餌することから始まります。餌を食べる牛、食べない牛で健康状態もわかります。「餌をやる事=牛の観察」が基本なのですが、現地スタッフにはなかなか理解してもらえませんでした。
餌の量も、基本の給餌量設定はありますが牛の状態を見ながら調節しなければなりません。餌の混ざり具合、食べ残しの量など、始めの滞在期間の3週間毎日現地スタッフとともに給餌をして牛の観察をする日々が続きました。ただし、この状態で牛を飼う事はできても肥育は難しいかなとそのとき正直感じました。肥育をかけ始めれば、さらに細かな餌の調整や健康管理が必要になってくるからです。
実際、その後の1年のうちに肥育で起こり得るおおよその問題を経験する事になりました。受け入れから1年間は、3カ月ごとに渡航して指導、プログラムの調整を繰り返しました。鼓張症(消化器にガスがたまり腹部が張る)、アシドーシス(酸血症)、子牛の下痢、肺炎など、毎回渡航するたびに新たな問題が出てきて、遠隔地での、しかも肥育管理の技術の乏しい国での牛飼いの難しさを痛感しました。
■将来に期待
その中でも、少しずつ現地スタッフと理解し合いながら、2年目にはかなり牧場らしくなりました。飼料の調達の安定、給餌スタッフの技術上達等から牛の事故も少なくなり、子牛の状態も改善されてきて、肥育に入る段階での牛の状態が良くなりました。その子牛たちが牛肉として出荷されるころには、牛肉の品質も安定する事を期待しています。
現在では、牧場内に専用屠畜(とちく)施設、牛肉加工場を建設し、品質管理体制は万全です。初めにオーストラリアから輸入した肥育素牛たちは、輸送のストレスや1年目の管理が行き届かなかったために、肉質は目指すものとはほど遠い結果になりましたが、これから出荷される和牛たちは品質が向上してくると信じています。ぜひとも、中東諸国の人たちをビックリさせるような品質の和牛肉を生産する牧場になってくれる事を願います。
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