無名のディスプレー
シドニーから車で5時間の内陸部のモーテル。荷物を降ろしていると、遠くから少年が手を振ってあいさつしてくれた。こちらも手を振ると、笑いながら「ニーハオ」と言って走り去った。ほかにも何か言っていたが、聞き取れなかった。からかわれたような気持ちだけが残った。
宅配ピザ店に入り、注文した。店員に名前を聞かれないので不思議に思ったが、こちらから名乗るのもおかしいので黙っていた。
店内で待っていると、店の奥から店員同士の会話が途切れ途切れに聞こえてくる。「うん。いや、英語は話せるんだ」。店内にはほかに非白人はいなかったので、自分のことだと分かった。名前を聞かれなかったのは、見た目ですぐに分かるからか、言葉が通じずに気まずくなるのを避けたのか。それとも……。
都会に住んでいると忘れがちだが、少しでも地方に行くと、マイノリティーであることを思い出す。名前が空白のディスプレーを見ながら、焼き上がりの時間を待った。(城一)
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