第48回 「Tenute Dettori」

Tenute Dettori
Badde Nigolosu 07036 Sennori  Sardegna, Italia.
+39 079 512772
http://www.tenutedettori.it/en/

例えばレストランで注文したワインがグラスに注がれた時、濁っていたらどうしますか?ソムリエやワインスペシャリストの養成学校では、テイスティングの度にワインについてさまざまな角度からアナライズする訓練をします。その中で最初に注目するのは「外観」で、透明感、色、輝きを観察します。授業では、毎回10種類ものワインをテイスティングするので、講座が終了するまでに60種類以上のワインをアナライズすることになります。その中で、筆者が「外観」で「濁っている」と判断したワインは一度だけでした。しかも、偶然そのワインは保存状態が悪く、酢酸化し始めていました。つまり、「不適格ワイン(Fault Wine)」ということになります。それ以外のワインは全て透明で、輝きがありました。

■濁りは不適格か?

この透明感や輝きは、一般的なワインを販売する上で欠かせないものになってしまったようです。ワイン造りが近代化されるにつれ、食品・飲料の品質規格は厳しくなり、異物混入や不適格な品質のワインは格段に少なくなりました。しかし、「濁ったワイン」が必ずしも「不適格なワイン」ではなく、そのワインの個性であることも珍しくはありません。

例えば、先日シドニーのレストランで出てきた「デットーリ・ビアンコ(Dettori Bianco)2013」は少し濁りがあり、クリーミーな外観でしたが、シトラス系の酸味と少し草のようなアロマがキリリと存在感があり、非常に良いワインでした。

■濁り酒の効果

後ほどこのワインについて調べたところ、やはり「濁り」については、フィルターろ過と清澄を行わない自然な作り方にこだわった結果だということが分かりました。今回の「デットーリ・ビアンコ」はイタリアのサルディーニャ島で生産されており、オーガニックのワイン作りを実践しています。ろ過を行わない分、果汁以外の成分も若干残りますが、オーガニックの環境で育ったブドウの成分であれば安心ですね。

日本酒でも、澱を残した「濁り酒」の自然な甘みや雑味を好む人も多いことでしょう。ワインも、ろ過によって失われるミネラル分を残すことで、一般的なテーブルワインよりもユニークで独創的な仕上がりになります。次回、偶然「濁ったワイン」に出会った時には、その独特の風味に注目してみてください。

オリジナリティー★★★★☆

保存性★★☆☆☆

安全性★★★★☆

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