第46回 し尿は資源か、汚染源か?

公共の場ではなにかと話すのがタブー視されている“し尿”。今回はそんな“し尿”をあえて話し合うセミナーに参加してきた。

国連では2000年に8つのミレニアム開発目標(MDGs)が採択され、水関連では2015年までに(1)安全な飲料水へのアクセス(2)基礎的な衛生施設へアクセス─がそれぞれできない人を半減することが掲げられている。

国連児童基金(ユニセフ)によると、安全な飲料水へのアクセスは目標年よりも5年早く達成できたという。その一方、基礎的な衛生施設へのアクセス改善は目標水準を大幅に下回っているのが現状だ。途上国では国内でも都市や地方、貧富の差によって、どれだけアクセスできるかが相当異なっている。

トイレや衛生施設にアクセスできない人は世界で25億人。このうち11億人の人々が、野外で排せつを行っており、インドやインドネシア、パキスタン、エチオピアなど12カ国の国々が4分の3を占める。野外排せつは特に子どもの間で下痢などの水系感染症の症状を引き起こしやすい。

これに加え、トイレ後の手洗いも重要である。ちなみに国連などでは10月15日を「世界手洗いの日」として、啓発活動を行っている。途上国ではし尿で川が汚染され、それを知らずに飲料水となっていることもあり、衛生面が非常に大きな課題となっている。

■トイレを快適な場所に

一方、先進国ではし尿やトイレに関し、新しいアプローチが求められている。し尿は不衛生で捨てられるのが必然と思われているが、同セミナーではし尿を肥料として扱うことが提案されていた。これは日本では目新しいことではない。江戸時代には農家がし尿を買い取り、し尿を使った肥料で育てた野菜を販売するという循環型社会が成り立っていた。「こうしたことが以前の日本で行われていた」ととなりのオーストラリア人の参加者に話すと、目を丸くしたのが印象的だった。

また最近オーストラリアの野外イベントでは、いかにトイレを快適で面白い空間にするかに注目が集まっているようだ。中にはトイレでライブが行われる場合もある。若者の意識を変えるために一役買っているという。参加者からは、水が不足ぎみのオーストラリアでは、一部の家庭や多くの国立公園に水が不必要なバイオトイレが導入されているという声もあった。

下水道という近代的な設備があるからこそ、われわれは現在、し尿を一瞬にして目の前から消し去ることができる。一方で、し尿の利用価値を高める面では行政の規制や人々の意識が障壁となっているケースもある。先進国では“し尿”を不衛生な廃棄物とする見方を逆転させ、“資源”として新たなトイレ文化を産み出すことも期待されているように感じた。

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