第54回 日本人の感性を花に! YUGA Floral Designの勢津子さん
「祖母が花を栽培していて花が身近にある環境でした。お花の仕事をしたいという気持ちは昔からありました」と語るのは、シドニーの閑静な住宅街にある、YUGA Floral Design & Cafeでディレクターとフラワーアーティストを務める柳澤勢津子さん。日本人の感性を生かして花を生ける勢津子さんに話を聞いた。
長野県出身の勢津子さんがオーストラリアに来たのは約30年前。英語を学ぶ必要性を感じて留学を考えていたときに、日本で当時英会話の個人レッスンを受けていたオージー講師から紹介された。職業訓練専門学校(TAFE)で秘書コースを受講するが、日本と比べて全てがゆっくりのオーストラリアにも物足りなさを感じて帰国を考え始めたが、出会いがあり結婚。シドニーで働き始めた。
花に興味があり、いつか仕事にしたいと思っていた勢津子さん。「自分のやりたいことを仕事にしたい」と、離婚をきっかけに本格的に取り組む決心をする。日本で勉強した後にシドニーに戻り、2004年から自宅でフラワー・アレンジメントを教え、花の注文を受けるようになった。教室も兼ねるカフェは10年前に設立。現在の夫のベンさんと切り盛りする。

「きょうは花があまりなくて」。取材前日に日本から戻ったばかりの勢津子さん
■鍵は農家とのつながり
現在は企業やレストラン向けや、結婚式やイベント向けの花の注文を受ける。シドニー空港に毎週通い、カンタス航空のファーストクラスラウンジを飾る花も、7年担当した。日本の生け花の影響を取り入れたフラワー・アレンジメント教室では、型にはまらず、オーストラリアで手に入る花を使った、シンプルで家庭で楽しめる花の生け方を教えている。
勢津子さんによると、「オーストラリアでは、たくさんの花を入れ込む欧州型よりも、侘び寂びのような日本のスタイルが受けられている」という。「生け花は、少ない花でもダイナミックに見せることができ、エコノミカルでエコロジカル。葉一枚の角度で違いが出るし、虫に食われた葉にも良さが出る」そうだ。
オーストラリアには存在感のあるネーティブフラワーがあり、ダイナミックなアレンジができるという。枝物など日本的なものは入手しにくいが、生産農家とのつながりを大切にし、農場に直接出向いて特別に切ってもらったりするそうだ。花を買うマーケットでは、生産農家や仲介業者としっかりコミュニケーションをとる。
検疫の厳しさで知られるオーストラリアだが、それでも昔と比べて輸入花が増えたという。オーストラリアで人気のシャクヤク(ピオニー)は11~12月がシーズンだが、ここ2~3年で、シーズン外でも輸入品が入手できるようになったとか。

オーストラリアの花、プロテアを使ったアレンジ(提供写真)
■今月にワークショップ
勢津子さんが花を生けるときに意識するのは、社名にもなっている「優雅」。花の一番美しいところを引き出し、エレガントな部分を残すようにしている。仕事ではオーストラリア人だったら……と思うこともあったが、今では、競争の激しい業界で、日本人の感性を生かすことで違いを出し、日本人であることが自分の軸となっている。
今後挑戦したいと思っているのは、複数のアーティストと一緒に、「究極のお花、研ぎ澄まされたアレンジメントを作り、展示すること」だ。
勢津子さんは陶器アーティストや絵画などの美術作品とのコラボレーションも行う。今月10日と17日にはシドニーのギャラリーSaint Clocheで、それぞれの美術作品に応じた花を生け、一般向けの生け花ワークショップも行う予定だ。
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