第50回 牛肉だけじゃない!多様なQLD北部農業を視察
2月末からダーウィンやクイーンズランド(QLD)州北部タウンズビル、ブリスベンを1週間にわたって訪問した日本からの官民合同ミッション。筆者も一部同行したが、目にしたのはエビや藻類の養殖や稲作など、QLD北部農業の予想を超えた多彩さだ。
ミッション参加者の関心を集めたのは、農業排水を利用した藻類の養殖だ。タウンズビルから70キロメートルほど南下したエア(Aye)にあるブラックタイガー(ウシエビ)養殖企業パシフィック・リーフ・フィッシャリーズ(PRF)は、藻類を用いたバイオレメディエーション(生物を利用して有害物質を分解・除去する浄化手法)テクノロジー企業MBDエナジーと提携し、MBDに養殖で発生した農業排水を提供。MBDは養殖場に隣接した施設で、藻類を家畜の肥料や人間の食用として養殖すると同時に、排水を浄化する。

PRFの養殖場は世界遺産グレートバリアリーフのすぐ近くにあり、排水は海から引き入れた水と同じか、それよりも水質の良い状態で海に戻す必要がある。PRFの売りの一つは、養殖業で問題となる病気が非常に少ないこと。水質は毎日検査するが、グレートバリアリーフのキレイな海水を使用していることが大きい。ブラックタイガーは国内市場からの引き合いが強く、供給が需要に追いつかない状態だが、今後は大幅に養殖場を拡張する計画で、輸出も視野に入れる。
PRFはこれまで、排水に関する環境規制が2010年に強化されたことで、事業拡張を見合わせていたが、MBDとの提携が奏功して、260ヘクタールの拡張計画が下りている。PRFは現在、100ヘクタールの養殖場で年間1,000トンのブラックタイガーを生産。年間売上高は20万~25万豪ドル(1豪ドル=約85円)だ。

■日豪で世界変える?
藻類は含有成分の栄養や健康効果が注目されており、人間向けの機能性食品や家畜などの飼料、作物の肥料、バイオ燃料の原料などさまざまな用途への利用が期待されている。藻類の養殖では、雨が少なく、海が近い広大な土地が必要なことから、日本では技術的に可能であるものの、土地がなく大量生産ができない。一方でオーストラリアは適切な条件の土地に恵まれており、関係者によると、日豪が藻類養殖でタッグを組むことで、世界を変えられるようなプロジェクトも可能だそうだ。
■途絶えた稲作が復活
QLD州北部バーデキン(Burdekin)を中心とするサトウキビ農家が、輪作作物としてコメの栽培を始め、昨年にはオーストラリア・コメ生産者協会(RGA)への加入を通じて、コメ生産に本腰を入れている。同州では過去にコメが栽培されていたが、価格安や病気などに直面し、州政府も転作を奨励したことから、栽培が途絶えていた。今では需要の増加もあり、サトウキビ栽培との相性の良さも評価されている。国内で生産されたコメの大半は、「サンライス」ブランドを持つライスグローワーズを通じて販売され、多くが輸出される。
コメは国内ではニューサウスウェールズ州リベリナが一大産地で、生産量はQLD州北部の10倍以上。生産量では大きく水をあけられているが、QLD州北部では今年、従来の「コアラ」ブランドに加えて「タリーグロウン・レインフェッド(Tully-grown rain-fed)」という新ブランドを立ち上げ、差別化を図っている。
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