第39回 トマトと羊毛?二足のわらじ履くマリリンさん
ビクトリア州中央部ボート(Boort)のトマト農家で、オリジナルのトマト加工品「シンプリー・トマトズ(Simply Tomatoes)」の原料生産から加工、販売を夫のイアン(Ian)さんらと行うマリリン・ラニオン(Marilyn Lanyon)さん。トマト製品だけでなく、羊毛製品の開発や販売、地元振興を兼ねて自らの農場ツアーも催行するマリリンさんに話を聞いた。
マリリンさんと待ち合わせたのはボートのトマト農場ではなく、同州ベンディゴで開かれる年1回開催の羊と羊毛製品の品評会「オーストラリアン・シープ・アンド・ウールショー」。同ショーは1877年から開かれている由緒あるイベントで、開催地はメルボルンだった時もあるが、現在はベンディゴだ。マリリンさんは同ショーで、ボートの業者が羊毛で作ったシーツなど寝具のブランド「オージー・ウール・キルツ」と、マリリンさんが商品開発も手掛ける、羊毛を使った加温パッド「ウーリー(Woolly)・ウォーマーズ」を展示販売しており、開口一番に「農場でなくてごめんなさい。いつもは必ず農場にいるのに」と迎えてくれた。
トマト農家のマリリンさんが羊毛製品を手掛けるようになったのは、地元で生産された羊毛を使うオージー・ウール・キルツのビジネスが売りに出されたのを、2009年に買い取ってからだ。羊毛は洗浄のためいったんジーロングに送られるが、加工はボートの農場で行っている。化学薬品などにアレルギーのある人向けに開発された羊毛と綿100%の製品で、健康志向の強まりや、重さや厚みなども細かくオーダーメードできることから人気を集めている。事業は非常に順調で、「売上高ベースでビジネスの8割を占めるようになった」(マリリンさん)という。
安定した顧客層を持つオージー・ウール・キルツだが、マリリンさんが今力を入れるのが、新商品ウーリー・ウォーマーズだ。羊毛を使っているため軽く、腹巻きのイメージで、ひざやひじ、肩、首など暖めたい部位別の商品がある。熱の源は体温のためじっくりと温まり、熱くなり過ぎることがない。「健康回復への効果(therapeutic)」が売りだ。
■トマトに付加価値
マリリンさんが事業を行う中で重要視するのは「十分な市場リサーチ」。「素晴らしいアイデアがあっても、そこにマーケットがなければだめ」だからだ。シンプリー・トマトズを02年に始めたときには、まず友人や地元飲食店などに製品を試してもらい、反応を見る。本格的な製造に着手する前にはトマト業界の視察ツアーに参加して複数の市場を調べ、香港での食品展示会にも顔を出し、トレンドを見極めた。
販売開始後も、デザイン賞を受けた自慢の包装に顧客から辛口のコメントがあったが、はねつけず謙虚に批判を取り入れた。「フィードバックを受けてこそ事業は成長するもの。商品を信じ、拡大を急がないこと」が大事だという。
シンプリー・トマトズは、生産するトマトに付加価値をつける取り組みで生まれた。マリリンさんは自身も料理好きだが、作ったトマトと引き換えに近所からレシピを集めたという。その中でイタリア南部カラブリア出身の人のレシピが残り、これが旗艦商品のシンプリー・グリーン・トマトズとなった。4日かけて加工され、材料はトマトと塩、酢、オリーブ油だけ。オリーブ油が保存料となり、保存期間は2年だ。今は国内のみだが、以前は日本などにも輸出していた。パスタや米料理に合うという。
■農場を無償開放
マリリンさんは人口約800人のボートで観光業にも携わる。町に立ち寄ってもらうため、寝泊まりできるRV車を対象に、無償でバーベキュー設備や水道など敷地を開放し、農場ツアーも提供する。1~3日程度の滞在は「気にしない」という。ボートへの訪問者は年間1,500人に増えた。やりたいことはまだまだあるが、「急がず一歩ずつが大事」と自分に言い聞かせているそうだ。
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